日本民族の発露 <結びの思想> その<自主・独立・固有の知覚>に依る再評価・価値転換・脱構築 超脱する思想が創り出す人間存在の未来 <民族の予定調和>へ向かう<縛って繋ぐ力による色の道> |
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鵜 里 基 秀 |
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<縄による日本の緊縛> その歴史的意義 15%の可能 縄文時代の遺跡から出土した土器は、 あたかも女性の身体をかたどったように、優美な曲線のあらわされたものであった。 それは、生まれたままの全裸にある女性を髣髴とさせずにはおかないものであった。 婦人の裸体は神の聖業である、と言ったのは、イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクであるが、 女性の全裸の優美は、国や民族を問わない、人間が知覚できる至宝のひとつである。 その土器の表面には、渦巻状の絵柄が意匠されていた、 これは、いったい、何を意味するものなのだろう。 <縄文>とは、土器の表面に縄を押しつけたり、回転させたりして、施された文様である。 渦巻状の文様は、自然界におかれた人間生活の流動と転変にあって、 繁栄と豊穣への祈願が示されていると想像することができる。 <縄>は、自然に生育する植物の繊維を束ね撚り合わせて作り出した、人間の<道具>である、 その<道具>の柔軟で強靭で多様な有用性は、神秘や美さえも現出させることにあっては、 人間を束ね撚り合わせて作り出された<社会>のありようと同様であり、 <縄文>の表象を起源として、その後の日本民族史は、 宗教・政治・軍事・農業・漁業・芸術・遊戯というあらゆる様相に示されて、 <縄>を所以とする<結びの思想>― 或るものと或るものを結びつけて、別のものを作り出す、例えれば、日本語 ―として展開されていく実際としてあらわされた。 しかも、その<縄>は、現在も実在して、人間生活の有用な<道具>としてある。 使用できる<道具>として、<縄>は、人類史上、最も起源の古いもののひとつである、 少なくとも、日本民族にあっては、縄文文化が固有のありようを示していることがあるとすれば、 <縄>を所以とする<結びの思想>が明確に存在したことにある。 <縄>を所以とする<結びの思想>が日本民族史を貫いていることであり、 それは、日本民族の因習を受け継ぐ、現在の我々にも、明確にあるということである。 現在の我々は、強いて、或る思想を取り込む必要もなく、 ましてや、他の民族の思想を模倣・追従・隷属する必要もなく、生まれたままの全裸に晒されても、 或るものと或るものを結びつけて、別のものを作り出す、 <縄>を所以とする<結びの思想>の継承者にあるということである。 縄文時代へ遡る時間が一万六千五百年とされるならば、 それだけの歴史時間を抱く思想を思考の根拠にしてあるということである。 この単純な事実。 この単純な事実がおざなりにされていることだとしたら、 ひとつは、先進的とされている他の民族の思想へ眼を奪われるばかりになっているか、 或いは、<縄>を所以とする<結びの思想>など、太古の遺物であると見なされていることにある。 いずれにあっても、日本民族として自然にあることの自己同一性からすれば、 矛盾した状態にあることは避けられないことであり、 その矛盾した状態を軋轢や苦悩として引き摺り続けていくことがあるとすれば、 まともなありようとは言えないことである。 みずからのなかにある、或るものと或るものを結びつけて、別のものを作り出す、 <縄>を所以とする<結びの思想>、 みずから、それに目覚めなければ、その力もまた充分に発揮されないことである。 民族の因習として、一万六千五百年にわたって継承されてきたものであれば、 DNAに刻まれ、日本民族の血肉となっていることであれば、 人間存在の考察として、当然、<心理と性>から見直されなければならないことである。 <心理と性>、これは、切り離しては考えられないものであることは、 人間の性的官能は、四六時中、活動しているものであれば、 それが心理に関係している事実を抜きにしてはあり得ないということであり、本来、 視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚という五感に加えて、第六感に位置付けて然るべきものであるが、 すでに、物事の本質を直観的に感じとる心の働きを第六感としていることであれば、 第七感とされるべき、重要な働きを示す、なくてはならない官能としてある。 そして、他の民族思想から生まれた<心理と性>の考え方に倣って行うことではなく、 みずからの民族の方法として、あらわされなければならないことが必須である。 日本民族としての自己同一性を明らかとすることに、 他の民族の思想は、大いに啓発を受けることではあっても、 その民族がみずからの自己同一性を明らかとさせるために作り出した思想である以上、 それに従うことは、その思想の民族性・宗教性までも引き受けることになるからである。 みずからの民族の問題に対しては、みずからの民族の方法が作り出されることが必然である。 縄文時代の遺跡から出土した土器も、 考察の方法をみずからのものとすれば、このようになることである。 それは、あたかも女性の身体をかたどったように、優美な曲線のあらわされたものであった。 生まれたままの全裸にある女性を髣髴とさせずにはおかないものであった。 その土器の表面に意匠された渦巻状の絵柄。 土器が全裸にある女性の身体をあらわし、その表面に縄が描かれていることだとしたら、 女性は縄によって縛られたことが表現されている、 という想像が生まれたとしても、不思議のないことである。 現在ある<縄による日本の緊縛>は、縄文時代に起源が求められると考えられる、 それは、表沙汰にする行為としては差障りのあることであったから、 歴史の闇のなかを脈々と受け継がれ、 表現の自由のある現代において、初めて露呈したものになったということである。 室町時代後期に発祥し、江戸時代に隆盛を見たという捕縄術、 人体を拘束する行為に宗教的意義を絡めて技法とすることのできた背景には、 すでに、女性は縄によって縛られた、という長くて古い因習が存在したからではないのだろうか。 文献や美術表現等の立証がなければ、想像の域を出ない見方に過ぎないことである。 だが、<或るものと或るものを結びつけて、別のものを作り出す>という見方からすれば、 一万六千五百年以来、縄文時代の土器は、折々に発見されてきたことであるが、 <縄による日本の緊縛>という表現が現代に露呈するまでは、 両者を結び付ける想像に及ばなかったという実際は、着目すべき事象である。 <縄による日本の緊縛>、 その歴史的意義は、それが現代において露呈されたものとしてあるという事実である、 その考察によって再評価される事柄により、 日本民族の自己同一性が明らかとされることにある。 (2009年8月9日 脱稿) 最新の研究では、国立遺伝学研究所の斎藤成也教授らのグループに依れば、 縄文人と現代の本土日本人の遺伝情報を比較したところ、 縄文人から現代の本土日本人に伝わったと考えられる、遺伝情報の割合は、およそ15%である。 (☆ 総合研究大学院大学 プレスリリース 2016年9月1日) |
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☆ 1. 考察の根本的立場 ☆ 2. 縄による緊縛の絵画 須磨利之 伊藤晴雨 ― ☆ 本文 ☆ 3. 因習の絵画表現 ☆ 日本の象徴的作品 ☆ 西洋の象徴的作品 ☆ 信心・しきたり・折檻の作品 ☆ 4. 因習の絵画表現 再び ☆ 終わりにして始まりのとき ☆ 5. <縄による緊縛>・ひとつの答え・ひとつの終わり ☆ 須磨利之の<猥褻で恥辱のある表現> ☆ 6. <縄による結び>の事始 ☆ <古い縛り>の写真 ☆ 小妻容子の<姦の紋章> ☆ 7. <縛り>のノスタルジアが誘う未来へ ☆ 8. 日本民族の縄による緊縛の美学 ☆ 9. 縄による日本の着物緊縛 ☆ 着物緊縛画像 ☆ 10. <被虐美>という猥褻で恥辱のある表現 ☆ 11. <縄>の実在論 ひねる・ねじる・よじる ☆ 12. <縄による緊縛>という<結びの思想> 13. 四十八手 ☆ (1) <理非知らず> (2) 『奥州安達ケ原ひとつ家の図』の<象徴> (3) 縄による緊縛における<言文一致> (4) 全裸を後ろ手に縛られた母の像 ☆ (5) <初期の段階 ― 和製SMの終焉 ―> ☆ (6) 縄師・水晶の表現 <廃屋の着物緊縛美> ☆ (7) <異化・変化・昇華> ☆ (8) 一万三千五百年の縄の執着 ☆ (9) 綯われる一筋の縄 ☆ (10) 通過点 ― 縄の被虐に晒される処女 ― ☆ 緊縛画像 ☆ (11) 総合性の絵画表現 或いは <脱構築>する絵画 ☆ (12) 拉致される想像 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ 緊縛画像 ☆ (13) 願望の緊縛絵画 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (14) 全裸で緊縛された沈思黙考 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (15) 廃屋の一軒家の情事 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (16) 麻縄で緊縛された供物 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (17) 縄による緊縛の意義 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (18) 道徳の処罰 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (19) <囲繞の檻>の中で ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (20) <M&E>の緊縛性愛行為 ― 縄の縛めに結ばれ合う母と娘 ― ☆ (21) <緊縛美の夫人>の誕生 ☆ (22) 日本国家が進行させる<三重層の密閉の構造> ☆ (23) <性奴>となる家畜化 ☆ (24) 静子夫人 ― 表象としての<隷属・受容・翻案体質> ☆ (25) 静子夫人の<教導> ☆ (26) <二元性・単一動機・執拗な反復>という物語の結構 ☆ (27) <田代屋敷>という国家 ☆ (28) <愛縛の聖母> ☆ (29) 折原珠江夫人の示唆 ☆ (30) <何か一つの幻影> ☆ (31) <属国>にあるという被虐の妄想 ☆ (32) <永遠の黄昏>から始まる思考作用 ☆ 縄による緊縛の絵画表現者 ☆ 縄による緊縛写真 ☆ 土蔵にあった長持のなかより発見された緊縛写真 ☆ 着物緊縛画像 補遺 ☆ 縄による緊縛小説 『悩ましい夢』 ☆ 展開の緊縛物語 『花の変異 ― 雅子外伝 ―』 ☆ 縄による緊縛の未来のお話 『女猿と男猿の未来』 ☆ 縄による御伽噺 『民族の根源の記憶』 上昇と下降の館 < 結 び の 思 想 > に 従 っ た 新 し い 文 学 の 展 開 <民族の予定調和>へ向かう<縛って繋ぐ力による色の道>
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