《 叔 父 の 愛 情 》 椋陽児 画 「おじさま、そんなにみつめないで、 由香は恥ずかしい……」 「叔父と姪の間柄で恥ずかしいことなんか、あるか。 わしは亡くなったおまえの両親に成り変っておまえを養育している父親でもあるのだぞ。 おまえに三度の飯を食わせ、学校に行かせ、こうして躾まで行なってやっているのだ。 おまえが女として世の中へ出ても、恥ずかしくないような行儀を教えてやっているのだ。 ありがたく思われることはあっても、うらまれるようなことをしているわけではない。 それはおまえもよくわかっているな、由香。 どうした、返事は」 白い靴下とセーラー服を羽織らされただけの裸姿に乳房を剥き出しにされた縄をかけられて、 由香はこみ上げてくる恥ずかしさと悔しさを抑えるように、「はい」と小さく答えるばかりだった。 どうして自分はこのような目にあわなければならないのか。 大きな疑問がその「はい」という言葉から波紋となって広がっていくが、 だれにも打ち明けられない苦悩は、この家のなかにあっては哀しみにしかならないのだった。 そして、不思議なことに、本当に不思議なことに、その哀しみの思いに心が満たされていくと、 浅ましい裸姿をおぞましい縄で縛られている自分が感じているものが、 恥ずかしさや悔しさよりもずっと深いところからくる胸騒ぎのような甘美な疼きであることだった。 叔父に初めて縄で縛られたときは、ただ泣きじゃくることしかできなかった。 二度目、三度目と度重なると、涙はすすり泣きに変わった。 いまはもう泣きはしなかった。 叔父に縛られるということがあたりまえのこととなってしまった。 三度の食事をとるように、学校へ毎日行くように、 叔父に行儀を躾けられるということが生活になってしまったのだ。 どうして自分はこのような目にあわなければならないのか。 大きな疑問は依然としてあるが、答えの出せる疑問など世の中には限られているのかもしれない。 「人が人としてどうにもならない生きざまを因縁に縛られていると言う」 と国語の先生がおっしゃっていた。 自分の置かれている境遇も、 自分では想像もつかない、わけのわからない何かに導かれていることだとしか思えない。 そう思うと、叔父がじっとわたしをみつめ続けていることがあたりまえのことのように思えてくる。 思えてくるだけではない、わたしはみつめられ続けているだけで、 胸騒ぎがますます甘美に疼いてくるのを意識しないではいられない。 叔父はそんなわたしの心を見透かしてでもいるかのように、頃合いよく、わたしの方へ近づいてくる。 そして、後ろ手に縛った縄や立て膝にさせた縄を解いていくのだった。 しかし、わたしはいましめから開放されたことで安堵の気持ちなど感じていなかった。 むしろ、縄を解かれたことで、それまでは身体を縛りつけていた縄が抑えていたものが、 胸騒ぎのようだった甘美な疼きが一気に戸惑うくらいの胸の高鳴りへと変化するのを感じていた。 わけのわからない何かが向かわせている先の期待のようなものを意識させるのだった。 叔父はわたしの身体からセーラー服を剥ぎ取り、靴下を脱がせた。 わたしは逆らうことなどしなかった、されるがままになった。 わたしは生まれたままの裸姿にさせられた。 恥ずかしかった、けれど、その恥ずかしさはますます顔を赤らめさせ、身体を火照らせるのだった。 叔父のにやにやしている顔が間近にあった、タバコ臭い息が吐きかけられ言われた。 「女はなあ、素っ裸になった格好を縄で縛り上げられた姿が一番美しいんだ。 それはなあ、男がみんな望んでいる女の愛すべき姿なんだ。 由香も縄の似合う女に成長すれば、男はみんなおまえの可愛らしさをほれ込むに違いない。 だが、まだまだ、おぼこだ。 わしがおまえを立派な女に育ててやるからな」 それから、あらためて縄をかけるのだった。 今度は股を開かされ、柱を背に両膝をつかされて縛られた。 乳房があらわになっているばかりではなかった、もっとも恥ずかしい箇所もあらわにされた。 両手は柱の背後で縛られ、覆い隠すことをまったくできなくさせていた。 立て膝に開かされた太腿にはしっかりと固定するような縄をかけられ、さらしものにされたのだった。 叔父はわたしを身動きが取れないように幾重にも縄を使って柱へつなぎとめると、 近くへ寝そべってまじまじとわたしの全身を観察し始めた。 眺め続ける叔父から顔をそむけずにはいられないほど、屈辱的な思いでいっぱいだった。 「いや、みつめないで……」 自分でもわからないままに、そうつぶやいていた。 けれど、もっとも恥ずかしい箇所をじっと見られているのかと思うと、 胸を熱く高鳴らせている動悸があの箇所へ飛び火したかのような微妙な疼きが感じられるのだった。 それはやがて悩ましいくらいのうねりをおびて下半身へ広がっていくのだった。 「いや、いや」 恐ろしいようなその緊張感を打ち払う思いになろうとすればするほど、 悩ましさは胸をときめかせるような気持ちのよい興奮をあらわにさせてくるのだった。 「いやっ、いやっ」 思いとは正反対の言葉をつぶやいている自分がよくわからなくなっていた。 ただ、胸をときめかせる悩ましさが気持ちのよい興奮に変わっていくことだけはわかっていた。 生まれたままの恥ずかしい裸姿を縄で縛られて、しかもこんな淫らな格好をさせられて、 本当は嫌だと思いたいことが気持ちのよい興奮を感じさせてくれる。 こんなわけのわからないことがあるのだろうか。 けれど、この興奮にひたっていられるなら、恥ずかしさも哀しさも何でもなかった。 どのくらいの時間、柱につながれた格好でいさせられたのか、わからない。 どのくらいの時間、叔父はわたしの身悶える姿を眺め続けていたのか、わからない。 叔父が柱に縛りつけたわたしの縄を解き始めたとき、 わたしはもっともっと大きな興奮が訪れる期待を意識していた。 それほどにわたしは、わたし自身に夢中になっていたのだった。 あらためてわたしは後ろ手にがっちりと縛られた。 ふたつの乳房が突き出すように胸の上下へ縄をかけられた。 それから夜具の上へ仰向けに寝かされると、膝を折り曲げさせられて双方の脚を縛られた。 わたしは何をされても、どのような格好にされても、抵抗などしなかった。 叔父のかけていく麻縄のひとつひとつがまるで生き物のように身体にまとわりついて、 身体を締め上げる拘束感が息づいているようにわたしをますますの興奮へと駆り立てていたからだ。 折られた双方の脚は縄でつながれ、わたしの首へとかけられて結ばれた。 「こんな格好、いやっ」 わたしは思わず叫んでいたが、叔父は用意していた豆絞りの手拭いでその口を猿轡するのだった。 わたしは猿轡をされたことで、むしろ安堵のようなものを感じていた。 思ってもいない言葉をわめき散らすのは嫌だったのだ。 「由香、とてもきれいだよ」 縄どめを終えた叔父は、布団の上に仰向けにころがされたわたしの姿をまじまじと見ながら言った。 そして、自分自身も身につけていた浴衣や下着を脱ぎ去ると、 男性自身もあらわな全裸姿になった。 わたしはその姿を見て胸が詰まらされるような恐れを感じた。 両脚を大きく開かされたわたしの姿だって、 わたしのもっとも恥ずかしい箇所を剥き出しにさせていたのだ。 それは死ぬほど辛い羞恥と屈辱の姿であった。 だが、その羞恥と屈辱はこらえようとすればするほど、悩めるような興奮に変わってくるものだった。 叔父がわたしのあからさまになった箇所を凝視し続けている貪欲な顔を直視することはできなかった。 叔父が興奮して赤々と反り上がらせている黒々とした欲望を見るのは恐ろしかった。 なぜなら、このように浅ましく情けなく酷い格好をさせられているわたしだって、 叔父と同じような貪欲な顔をして、恥辱の箇所を興奮させているに違いなかったからだ。 「由香は感じているんだね。 てらてらと光っているあそこがとてもきれいだよ。 縄で縛られて男に見られているだけで、 こんなにも敏感な反応を示す由香はいい女になれる素質がある。 わしがこれからその具合をもっとよくしてあげるからな」 わたしのありさまを決定付けた叔父の言葉がぐさりと心に突き刺さった。 叔父は裸の身体をかがめると、わたしの羞恥の箇所へ顔を近づけて指でそっと触れ始めるのだった。 拒絶をしたくても、どうにもならない姿にさせられていた、どうにもならない思いにならされていた。 叔父の指先が触れた瞬間から、私の身体は定められたことのように突き進まされていた。 指先でもてあそぶと、今度は舌先でと、繰り返される叔父の飽くことない執拗な愛撫は、 降りようと望んでも降りられない階段を徐々に昇らされているという思いへ満たしていくのだった。 恥ずかしさと情けなさと不安と恐れが渾然一体となって思いをねじらせ上へ上へと向かわせるのだった。 それが本当にわたしが期待していたものかどうか、わたしにはもうわからない。 ただ、身体が熱く火照り震えがくるくらいの快感にまで高まってくると、 もう、思い悩むことなど馬鹿らしいだけのことだと感じるようになるのだった。 どうして自分はこのような目にあわなければならないのか。 そんな疑問は、もはや「因縁だ」というひと言でわたしにとっては当然のことだと思えてくるのだ。 避けようにも避けられない、避けたくても避けられない、わたしの因縁なのだと。 なぜなら、わたしと叔父との夜はまだ始まったばかりのところだったのだから。 |
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