生まれ変わり 或いは 女神の創造 第2章 美の化身 借金返済で弁護士に相談






第2章  美の化身


授業開始の教室に立っている、十六歳の高校一年生のあなたが握っていたのは、
短い麻縄の両端を本結びにした、<環に結ばれた縄>でした、
あなたは、同級生に見られまいとして、慌てて、スカートのポケットへ隠しましたが、
その様子を眺めていた、ひとりの女性教諭の存在に気付くことはありませんでした、
女性教諭は、数学を担当する授業のために教室へ来たのですが、
工藤安芸子という名の三十六歳になる独身教師があなたの素振りを見逃さなかったわけは、
あなたがこの女子高校へ入学したその日から、あなたの美少女としてのありように対して、
惹き付けられる関心を抱き、それは、構内であなたを見かける度に、
思慕が恋慕へ変わっていくというありようにあったことからでした、
更には、数学教師が<縄>を見たということは、重要なことにありました、
数学教師は、幼少時から、女性にしか関心を持てないみずからを意識していました、
成長するに従って、女性という存在だけが理解のできる対象にあることに苦悩しました、
しかし、教師になるために大学へ通う頃には、言い寄ってくる男子学生もいたなかで、
みずからの性的苦悩を理解するという女性もあらわれたことにあったのでした、
その女性は、高校の同級会の二次会で無理やり誘われて連れて行かれた、
池袋にあるスナックのママでした、
年齢は四十歳なかばにあるママは、彼女の思い悩んでいる理由を鋭く察知して、
あなたさえよければ、一度遊びに来なさいと名刺を握らせたのです、
彼女は、どのように考えたらよいか分からない勧誘を突き付けられた思いにありましたが、
名刺を握らされたときに言われた言葉は、印象に残るものがあったのです、
あなたが抱いていることは特別なことではないわ、
そのような女性は、みずからを明らかとしないだけで、普通にいます、
私の知り合いにも、少なからずいます、
一度、彼女たちの話も聴いてみたら如何かしら……
将来の数学教師の演算は、スナックのママへ電話をするという結果になりました、
ママは、事務的な口調で、店を休む予定の日の指定時間を告げましたが、
それを素直に承諾する安芸子に対しては、可愛い子と答えたことにあったのでした、
当日、緊張感のある心持ちで、スナックの扉をノックした、安芸子は、
出迎えたママから、お友達はすでにお待ちかねよと言われました、
店内へ入ると、二人の女性がカウンターの椅子へ腰掛けて、
明らかにアルコールの飲料と分かるグラスを前にして、彼女の方を見やりました、
二人とも、年齢は三十歳前後にある、普通の会社員にある方のように見えました、
二人のひとりが席を移して、どうぞと安芸子が二人の間へ入れるようにすると、
ママは、座るように勧めながら、すでにいる二人と同じ飲み物を前に置いたのです、
二人とも挨拶なさいなとママに言われて、
おずおずとしていた二人は、それぞれに、藤田由子と川端紀子と名乗りました、
安芸子も、ためらいがちに、工藤安芸子と自己紹介をしました、
ママは、にこやかな微笑を浮かべながら、挨拶も終わったことね、
それでは、今日、あなた達が此処に集まることになったイベントを始めましょうと頷くと、
すでに、アルコールの入っていることの明らかな由子と紀子は席から立ち上がり、
二人は、仲良さそうに手を繋いで、店の奥へと消えていくのでした、
ママと二人きりになった、安芸子は、ただならない雰囲気を感じていましたが、
笑顔のママに勧められては、前へ置かれたグラスに口を付けるほかありませんでした、
ママに飲み干してと言われれば、それを拒むことのできなかった、安芸子でした、
ママは、思っていた通りと頷くように、更に、グラスの中味を新たにするのでした、
ほろ酔い気分となっていた安芸子でしたが、頃合を見計らったように、
店の奥から、由子と紀子が姿をあらわしたのです、
今度は、二人は、仲良さそうに手を繋いだ様子にはありませんでした、
紀子は、仮に、手を繋ぎたいと望んだとしても、その姿態では無理がありました、
両手を後ろ手にまわされていたのです、そればかりではありません、
一糸も身に着けない、生まれたままの全裸の姿にあったのです、
しかも、その全裸姿は、二つのふっくらとした乳房を上下から挟んで、
麻縄が胸縄として掛けられていることにありました、
その縄による緊縛の姿を見た瞬間、安芸子は、あっと声を上げて、目を逸らさせました、
その様子を見て、つかさず、ママは、優しい声音で言うのでした、
安芸ちゃん、驚くことかもしれないわ、初めてのことですものね、けれど、
これから行われることは、私たちが共通の性的志向を持っているからできることよ、
世の中で理解されない立場にある性的少数者がみずからを弁明する言葉よりも、
少数者同士は、お互いを遥かに理解し合っていることをあらわす方法に過ぎないことだわ、
ママに優しく肩を抱かれながら、安芸子は、驚きと戸惑いと不安の中にありましたが、
由ちゃんと紀ちゃんは、今日、あなたが私たちの仲間に加わってくれるということで、
あなたを歓迎するために、精一杯の思い切ったことをしているのよ、そのように言われて、
安芸子は、思わず、ママの顔立ちを見つめ、それから、由子と紀子を見やるのでした、
陰毛までも露出させた全裸を後ろ手に縛られ、突き出すように胸縄を掛けられた、
紀子は、直立させた姿勢を少し折り曲げるようにさせて、恥じらいを漂わせながらも、
その顔立ちは、真剣な表情でこちらへ向けられたものにありました、
紀子を縛った縄尻を取って、脇へ姿をあらわした由子も、
一糸も身に着けない、生まれたままの全裸の姿を露わとさせて、真剣な表情にありました、
そのような態度をあらわす二人に対して、安芸子も真剣な表情にならざるを得ませんでした、
安芸子が自分たちを見つめ続けていることを知ると、
由子は、紀子の姿態をみずからの方へ向けさせ、相手の顎を優しく捉えるなり、
唇を重ねていくことをしたのです、紀子は、緊縛の裸身をもどかしそうにしながらも、
されるがままにあったことは、由子の口づけを更に大胆なものへと向かわせることになりました、
ぴちゃぴちゃ、くちゃくちゃと音が立つくらいの二人が絡ませ合う舌先の熱烈な愛撫は、
安芸子を唖然とさせるばかりで、見つめ続けるしかないという光景にあったのでした、
そして、隣に寄り添っていたママがいつの間にか一糸も身に着けない全裸の姿にあったことは、
安芸子にとっては、もはや、驚きというよりも、
この場の雰囲気に完全に呑み込まれてしまったみずからを感じるしかないことにありました、
ママは、安芸子に強要することはありませんでした、その代わりに態度であらわしたのです、
さらけ出された全裸の乳房にある乳首を互いに擦り付け合いながら、
夢中になって舌先の愛撫を熱烈に続ける二人に近付くと、
その二人と代わる代わる舌先の愛撫を始めることをしたのです、
三人の全裸姿にある女性が弁明する言葉はいらないとされる互いの口を求めて、
舌先を絡めさせ、もつれさせ、吸い合うさまは、文字通りのものにあることでした、
やがて、そのような行為が気持ちの良い官能の高ぶりにあるとでも言うように、
ママと由子と紀子の上気した顔立ちは、うっとりとさせた眼差しを向けて、
一斉に安芸子の方へ投げ掛けられたのでした、それは、
今度は、あなたの番よと言われる勧誘が微笑としてあらわされたものにあったのでした、
安芸子には、この場を立ち去ろうという思いは浮かびませんでした、
ママと由子さんと紀子さんは、自分のために露わとさせていることが実感できたからでした、
これまでの人生において、少数者にあることで感じてきた、寂しさや辛さや苦しさは、
いま、この場において込み上げさせられる、甘美な官能の疼きのとても心地良く、
それを感じさせてくれるこの人達こそ、同じ性的志向を持つ仲間にあると思えたことにありました、
慰められると感じたことは、安芸子に身に着けている一切を脱ぎ去らせたのです、
一糸も身に着けない、生まれたままの全裸の姿をさらけ出させて、
三人の待つ世界へ飛び込んでいくことを決心させたのでした、
ママがあなたを縛るわよと言って、麻縄の束を示されるようにされても、
安芸子は、しっかりと頷くと、みずから両手を背後へまわさせる仕草を執るのでした、
ママの巧みな縄さばきは、安芸子に掛けられる縄を胸縄だけに終わらせませんでした、
ほっそりとした首筋にも首縄が、くびれをあらわす腰付きにも腰縄が、更には、
その腰縄からは正面へ縦縄が下ろされて股間へ通され、
尻の亀裂でたくし上げられた張力が女の割れめへ埋没する股縄が掛けられたのです、
そのような想像を遥かに超えた姿にされても、安芸子は、あらがう言葉ひとつもらさず、
されるがままの従順にあるだけでした、縛り上げられた縄尻をママに取られながら、
引き立てられるようにして、店の奥へと向かわされることにあっても、
共通の意識にある三人の全裸の女性と一緒のことは、喜びを与えられることにあったのです、
店の奥には、八畳の日本間がひとつあって、
そこには、すでに、水色のシーツが敷き詰められた布団が敷かれてありました、
安芸子は、シーツの上へ緊縛の全裸を仰向けに横たえられ、
その真っ直ぐ伸ばさせた姿態の足元にはママが座り、
縄を解かれて両手を自由にさせた紀子と由子が添い寝をするように、
左右へぴったりと裸身を添わせるのでした、
それから、安芸子は、三人の全裸の女性たちから、
指先と舌先を使った愛撫を受けることになるのでしたが、
女の急所を心得た巧みな指さばきや執拗で熱烈な舌先の愛撫は、
安芸子の顔立ちから二つの乳房、腰付きから腹部、陰部から両脚へ及んで、
高ぶらされ続ける官能は、女の絶頂を幾度も経験させられるものにあったのでした、それは、
縄で縛られた緊縛感を受身する状況にあるからこそあり得たと確信できたことでもあったのです、
安芸子にとって、高倉真美が握っていた、<環に結ばれた縄>は、
そのような重要な意味を伝えてくることにあったのでした。

工藤安芸子は、高倉真美が何故あのようなものを所持していたのかを考えました、
答えが出るはずのものではありませんでした、ましてや、そのときは、
そのような個人的な事柄にあることよりも、学校を揺さぶる事態が起きていることにあったのでした、
高等部第三学年の一之瀬由利子が起こした問題があったのです、
名門の女子一貫校にあって、良家の子女が勉学することも、当然のありようとしてありました、
しかし、身分の高い子女がレズビアンをあらわす愛欲行為に引きずりこまれたとしたら、
事態は、尋常でない判断を仰ぐ以外にないという状況となることにあります、
一之瀬由利子は、身分の高い子女を相手に口づけを交わし、
舌先の愛撫で相手を性的官能の絶頂へ至らせたという事実は、驚愕そのものにあったことでした、
身分の高い子女は、みずからが一之瀬由利子に対して思慕を抱いたとは弁明しませんでした、
余計なことを語らないということがその尊厳をあらわすことにあったからでした、
一之瀬由利子は、校長室へ呼び出されました、
校長は、 一之瀬由利子の清楚な顔立ちの高貴な美しさ、艶やかで長い髪の艶麗な美しさ、
セーラー服姿のしなやかな姿態の清廉な美しさと面と向かうなり、どぎまぎとしていましたが、
犯した行為の重大さは、判決の宣告のように述べられる必要から、次のようにあったのでした、
「大変なことを仕出かしてくれたものだ、まったく、前代未聞だ、
犯したことの重大さからすれば、おまえが常習者らしいということからも、
今後も、犯す可能性がないとは言えない、
本校においては、教育の処罰を与えることで、二度と起こらないことを求めるものとする」
そのように言い渡されると、
一之瀬由利子は、その高貴な美しさを漂わせる清楚な顔立ちを上げたまま、
綺麗な声音で、音楽を奏でるように述べ始めたのでした、
「なよやかな黒髪は、ポニー・テールの髪型を解きほぐされ、豊かに波打つ美しさで、
ほっそりとした流れるような眉、大きな黒目がちの瞳をした両眼、
可愛らしい小鼻のある通った鼻筋は、結ばせた唇の綺麗な形を引き立たせて、
その子は、慎ましやかな表情を輝かせる、愛くるしい美貌にあったのです、
その容貌が心惹かれる可憐さであれば、その女性を愛することに躊躇することは、
無粋としか言いようがありません、
美をあらわす女性に対して、一之瀬由利子は、近付かずにはいられないのです、
言葉を掛け、その子が拒絶をあらわさない限り、その子から望まれるままに、
美しい唇を重ね合わさずにはいられないのです」
しかし、口づけは、触れるだけというような簡単なものではありませんでした、
舌先を相手の口へ含ませて、もつれ合わせた挙句、
相手を官能の絶頂へ至らせるということにあったのでした、
一度その快感を知れば、再び求めたいという欲求を呼び覚ますものにあったのでした、
問題が発覚したことも、
身分の高い子女がそれを悩んでいる様子を察知されたことにあったからでした、
高校生にありながら、しかも、女性同士で、そのような情欲をあらわにする口づけをするなど、
不道徳極まりないことであり、女子が性的絶頂を極めるとは、言語道断の事態にありました、
一之瀬由利子を見れば、その清楚な顔立ちの高貴な美しさ、艶やかで長い髪の艶麗な美しさ、
セーラー服姿のしなやかな姿態の清廉な美しさなどからは、
悪の気配は微塵も感じられませんでした、
勉学においても優秀であり、聡明で生活態度も品行方正と見なされていました、
しかし、不埒な振舞いを積極的にする女性が常識をわきまえた、品行方正な生徒である、
と言えるはずはないことでした、
素行不良の生徒は、校長室で、居並ぶ教職員たちの前で、
不埒な行いを今後は二度としない、という誓約を求められたことにありました、
しかし、一之瀬由利子とは、何という女性なのでしょう、
セーラー服に包ませた優美な姿態を直立させ、毅然とさせた美しい顔立ちを上げて、
「私には、心にも、身体にも、やましいところは、ありません、
私は、女性であるからこそ成し遂げられる、そのように生きているだけです」
はっきりとそう答えたのでした、
十八歳の清楚で可憐な美しさにある少女、はために見れば、それだけの高校生です、
それが何という傲慢な口の利き方でしょう、
未成熟な女生徒の不遜な言葉には、年配の男性教職員が憤りを感じました、
「自分がいったい何をしているのかも分からないのは、
人間が持つべき知性がないのと同然だ、それでは、動物と変わらない、
学業とは知性を教育することにあることだ、
言葉で話してわからない、動物と変わらない生徒なら、体罰しかないことだ、
体罰の言葉が悪ければ、調教する以外にないことだ!」
そのような意見が出されると、残る男性教職員たちからも、口々に賛同が起こりました、
女性教職員にも同調が示されて、年配の女性が代表となって意見を述べました、
「少しくらい顔立ちや身体付きが綺麗だからといって、
若いからって、自惚れているのだわ、この子は、
何様のつもりでいるのかしら!
体罰などではありません、調教などでもありません、まことの教育の実践です!」
教職員たちの意見を聞きながら、教頭は、しっかりと頷いていました、
校長は、このような小娘に舐められてたまるかという威厳をあらわしながら、裁定を下しました、
それを合図に、女性教職員たちは、数人掛かりとなって、
傲慢な女生徒の身に着けていたセーラー服を脱がせ始めたのです、
いや、セーラー服ばかりではありませんでした、
スリップも、ブラジャーも、ストッキングも、ショーツに至るまで、
見る間に、一切が剥ぎ取られていったのでした、
動物は動物のように扱われる、
動物は、丸裸であることが動物の所以であれば、一糸も必要とはされない、
それがあらわされた挙動に過ぎないとされたことでした、
一之瀬由利子は、そのような取り扱いを受けても、あらがう言葉ひとつあげず、
逆らう素振りひとつ示さず、毅然とした態度を崩さずに、
されるがままになっているばかりでしたが、身に着けるものひとつ許されない、
優美な全裸の姿態をこれ見よがしのあらわとさせられたときには、
さすがに、綺麗な形の唇を噛み締めて、
居並ぶ教職員たちへ向けて、懸命にこらえるまなざしを浮かばせていました、
それでも、可憐な乳首をつけて綺麗な隆起を見せるふたつの乳房、
慎ましやかにふっくらと茂らせる漆黒の恥毛をあからさまとされても、
覆い隠すどころか、見せつけるようにさえした、直立の姿勢にあったのでした、
その気丈な態度は、恥ずかしいのは、いずれの振舞いにあるのか、
と問い掛けているような潔癖さえ滲ませたものとしてあったことは、
年配の女性教職員をむかつかせ、絶対に許さない、といった激しさで、
「その姿が恥ずかしいと感じるなら、考えを改めると言いなさい!」
と激しく問い詰めさせたことにありました、
しかし、傲慢な生徒には、返答はありませんでした、
居並ぶ教職員たちに囲まれて、問責の凝視を続けられる女生徒に、
しばらくの猶予の時間が与えられました、
しかし、張り詰めた緊張を終わらせる言葉は、全裸の女生徒にはありませんでした、
「考えを改める意思がないのであれば、仕方がない……
女性なら女性らしくあることの倫理ある節度な振舞い、
その自覚に目覚めるまで、戒められなければならないことだ」
教頭が厳粛に述べたそのひと言は、
男性教職員たちに麻縄の束を持ってこさせることを促しました、
一之瀬由利子は、ほっそりとした両腕を背後へ強引にねじ曲げられ、
重ね合わされた華奢な両手首へ、麻縄を巻き付けられて、縛られていったのです、
そればかりではありませんでした、綺麗な乳房の上下にも胸縄を掛けられ、
背後へ結ばれた縄をほっそりとした首筋で分けられて、胸縄へと絡められて、
可憐に立ち上がった乳首もあからさまに、乳房を突き出すような具合にされたのでした、
女性の情欲の浅ましさあらわす、淫猥を漂わせる姿にされたことは、
ジャン=ポール・サルトルが述べた、
<もっとも猥褻な肉体は、サディストが縄で縛って眺めている相手の肉体、
つまり自由を奪われた肉体である>ことを見事にあらわすように、
その場にいた教職者全員は、偉大な哲学者の正鵠を射る表現であると感じさせられたことでした、
猥褻とは、尊厳と意識する恥が逆撫でされ、恥辱があからさまとされることでは、
恥を意識するみずから、恥を意識させる対象、その双方がその状況において、
性的官能の高ぶりを自覚することにあるのは、否定できない前提にあることです、
状況がそこに留まれば、猥褻な事象に過ぎないとして終わることでも、
教頭の申し渡した、倫理ある節度な振舞いの自覚とは、
そのようなありさまにするだけに留まることではなかったことは、
学業とは知性を教育することにあり、教育とは教え育むものとしてあること、
その正義をあらわすことが不可欠の事柄としてあったことからでした、
優美な全裸の姿態を自由を奪われた後ろ手に縛られ、
露骨な胸縄を施された強情な女生徒は、無理やり、床へ腰付きを落とさせられると、
しなやかに伸びた綺麗な両脚をあぐらの形に組まされ、
重ね合わさせた両足首を縛られて、その縄尻を首筋へ掛けられていったことにあったのでした、
その姿態のままに、床へ仰向けに倒されることをされれば、
女性が羞恥の極みとしている箇所は、無情にあからさまとされることにありました、
教育の実践とは、実際に、そのようにして行われることにあったのでした、
みずからの羞恥の極みを知ることなしに、羞恥の何たるかを理解することはできない、
真の羞恥を知ることなしに、不埒の何たるかを理解することはできない、
不埒にあることの羞恥へ思い至ることでなければ、改悛の思いは決してあり得ない、
このように教え育まれるありようとしてあったことでした、
しかし、そのような厳粛な理念に置かれた身上にあっても、
一之瀬由利子は、苦悶を懸命にこらえて、美しい顔立ちを真っ赤とさせてはいましたが、
改悛を滲ませる素振りを示すようなことは、まったくなかったのでした、
いったい何が、この女生徒をそこまで頑なにさせるのか、
みずから言い放った、女性であるからこそ成し遂げられるという思いからなのか、
それでは、余りにも馬鹿げていることは、
このような小娘にいったい何が成し遂げられると言うのか、
世間もろくに知らない小娘にできることは、世間を見渡してみても、高が知れている、
そもそも、生徒にあるだけの境遇にいる女子が思い付くようなことでさえない、
生徒は、先生から学ぶだけの存在であるから、生徒であることでしかない、
隷属する者は、模倣と追従を思考の根拠とするから、似たものしかあらわせないことにある、
教職員たちには、ただ、不可解と感じられることでしかなかった状況でした、
そのあらわす姿は、ただの傲慢・強情・偏屈・独りよがりとしか見なされなかったことだったのです、
「このような恥さらしもいい格好にさせられて、
それでも、改悛ができないほど、
この子は、性根が腐っているということでしかないのだわ!」
吐き捨てるように見解を述べた、年配の女性教職員のまなざしは、
居並ぶ、他の教職員たちのまなざしと同様に、
江戸時代にあったとされる、拷問で言うところの海老責めの姿にされた、
晒された本人にあっては、最も見られたくない箇所へ注がれているのでした、
さらけだされた艶やかな白い太腿の間へ、これ見よがしと開かせた女の羞恥、
真珠の小粒のきらめきを見せる女芽、瑞々しい色艶を放ちながら結ばれた女の花びら、
みなぎらせる若さの鮮やかな肉の深奥をわずかにのぞかせながら、
引き締まらせた菊門は、慎ましいというばかりに、可憐なありさまがある箇所でした、
傲慢・強情・偏屈・独りよがりの少女が不埒な思いを抱いている、
そのねじくれて、あばずれた、醜悪なあらわれとは、映らないものでした、
瑞々しい清廉を匂い立たせる女の割れめは、
全裸とさせられた羞恥、掛けられた縄の拘束が柔肌を圧迫して高ぶらせる官能、
さらには、恥辱の姿態に放置され続けるありさまから、
女性であれば当然のこと、人間であれば必然のこと、
それを見事にあらわす、きらめく純粋なしずくを滲み出させてもいたのです、
「何よ、この子!
まだ、他人から教わるだけの生徒の分際で!
いっぱしの大人のように、女の花蜜を滲ませているのじゃなくて!
まったく、嫌らしい! 不埒そのものだわ!
思春期の年齢にある女性が意味するものが処女であれば、
処女の輝きとは、それを誇りに思うことであらわされることだわ、
それを処女であることがむしろ恥ずかしいとでも言うように、ポルノ同然に、
男性から触られない女性は、女ではないとでも言うように、
女の花蜜を滲ませれば、すぐにも、誇りも輝きもなく、
受け入れてしまう放埓、まったくの不埒そのものよ!」
その言葉が皮切りとなって、居並ぶ教職員たちの口々から、
未成年者に対する批判の罵声が浴びせかけられていくのでした、
「この子が言った、女性であるからこそ成し遂げられるということは、
この滲ませた不埒があらわす通り、みずからの援助交際を正当化していることだわ、
普通の常識ある女の子であれば、このような恥辱の姿に晒されれば、
泣き喚いてみずからの悪を悟り、倫理ある思いに改めたいと懇願するもの、
それができないことだとしたら、
滲ませた不埒で金銭を得ている売春婦の根性にあるからだわ、
金銭で何でもかなえられると考えていることよ、
思春期の子供が考えるべきことをまったく失っているということだわ、
マスコミの情報が金銭を尺度として、人間と事物の評価を堂々とあらわしている現実、
それに災いされた、被害者とも言うべき姿ということだわ!」
「いや、それには、このような子供に育て上げた、親に責任があることだ、
子供との関係を面倒なものとはしたくないと考えるあまり、
子供を倫理の枠に基づいて、教え諭すということができずに、
子供が望むままの放任主義に置いてしまう、あるのは、教師へのなすりつけだけだ、
情報があふれるばかりの時代にあっては、子供は、情報を自由に取得できるから、
みずからの気に入った情報に基づいて、みずからの倫理観を育んでしまうことになる、
教師が正当な倫理観を示すときには、すでに一人前のように出来上がってしまっている、
この女生徒があらわすように、教師に対しては、
ただ、良くて反発、悪ければ無関心や無感動となり、
その態度は、独りよがりということに尽きてしまうということだ!」
「社会が人間を作り上げるということでは、
そもそも、健全な社会が営まれていれば、このような子も生まれないはずのこと、
猥褻で非道徳なポルノが容易に取得できる不健全は、ひとつの例に過ぎない、
ポルノは、いまや、児童ばかりか乳児にまで及んで、金を稼ぐための種とされている、
それは、厳重な取締りや管理が必要とされることであるが、
その法を担う、模範となるべき立場の政治家や官僚や官吏が法を犯すことしていれば、
悪いのはどっちだ、と子供が疑問を持つのは当然ことであるし、
その判断を両親に求めたところで、
母親が幼い娘の裸体写真で小遣い稼ぎをしているという親のありようでは、
社会の不健全が子供を不健全な思考へ向かわせているというこの子は、
絶望のあらわれだ!」
「不謹慎な発言かもしれないが、それにしても、この子は、何と綺麗なんだろう、
艶やかな長い黒髪、清楚で美しい顔立ち、優美な女性の曲線を瑞々しくあらわとさせて、
悪に染まることがなければ、アイドルにでもなれる、ずば抜けた麗しさがある、
このように美しく、ひとを惹き付けずにはおかない外観でありながら、
ただ、心が悪に染まっているというのは、矛盾としか言いようのないことだ、
この子が善に目覚めてくれさえすれば、このような酷い問責にあわずに済んだものの、
人間は外見ではわからない、という昔からの言葉どおり、
酷い問責に晒されても、善に目覚められないほどにあるということは、
善は美しいものとしてあることならば、
この子のあらわす美しさは悪であって、実は、美しくはないということでしかないのだ!」
「ひとを惑わす美しさ、古来より、したたかな悪女の備える必須条件のひとつだわ、
この子は、この年齢ですでに見事な悪女に成長しているあかしだわ、
ひとを惑わす美しさをあらわせない悪女であれば、
たらし込めると思える相手だけを餌食に、幸福な関係を餌にして実際に毒を盛って殺す、
この子のようなタイプは、ひとを実際に殺害することはない、
ひとを惑わすその美しさで相手の心へ毒を盛ることをする、
相手がどのように魅せられて、この子を思慕しようと、この子の心に相手はない、
相手は、生きる屍同然に、ただ、この子を熱烈に思慕し続けるだけ、
人生の価値観は、この子を中心として回転して行くものでしかないという茫漠たる寂寥、
この子にそれだけの悪魔の魅惑があるとは思いたくないけれど、
切実な現実にあることも事実!」
「神は、何故に、このような者をお創りになられたのか、
神を信じるだけの謙虚な考えがあれば、誰でも、神の慈悲にすがることができる、
この子も、女性であるからこそ成し遂げられるなどという思い上がった考えを捨て、
神の意のままに、絶対という畏怖に従って、慈悲の心にあるべきことだ、
神は、何故に、このような者をお創りになられたのか、
それは、神を超えるものを人間は創造することができない、というあかしのためだ、
この子の心がいずれは見い出すことは、それでしかない、
悪は、善が存在することによって、その存在理由をあらわすものでしかないのだ、
悪は、善が存在することによって、滅ぼされるものでしかないのだ、
この子の不遜な思いは、絶対の神によってのみ、救済されるものでしかないのだ」
と最後に述べたのは、心優しい信者である、教頭でした、
ただ一人、それに加わらなかったのは、工藤安芸子でした、
彼女には、みずからの縄による緊縛体験から、その状況に違和感を抱いていたからでした、
残る教職員たちは、批判を続けていました、
顔立ちから身体の隅々にまで至って、好奇と揶揄のまなざしでのぞかれながら、
いつ終わるとも知れずに続けられる、教職員たちの言葉に、
一之瀬由利子は、唇を真一文字とさせたまま、泣き出す声音はおろか、
苦悶からのうめき声さえもらさせまいと我を張り続けていました、
常識ある人間であれば、到底耐えることのできない、汚辱の姿に晒されながら、
それでも拒絶された、改悛の問責に対して、
ついに、校長から、荘重な口調で、処罰の宣告が下されることになったのです、
「校門のそばへ、見せしめのための白木の十字架を建て、
この者をそこへ、ありのままの姿ではりつけにして、晒しなさい、
<善悪を悟らない者>、それがこの者の素性をあらわす、掲げられるべき銘文です、
見つめられる生徒たちの純真で誠実な穢れのないまなざしを知れば、
この者も、その罪の大いなる深さを知ることでしょう」
教職員たちにあっては、校長の見事な裁量に対して、感服の喚声をあげるばかりにありました、
それから、女生徒は、全裸を後ろ手に縛られ、胸縄を掛けられた姿態のまま、
縄尻を取られ引き立てられた姿で、処罰の道を歩まされたのです、
見事な蔦の装飾を施された立派な門柱のすぐ近くへ、白木の十字架が高々と掲げられました、
あからさまとさせた全裸の姿態をはりつけられた、
一之瀬由利子の恥辱の姿を全校の生徒が見させられたことは、
教育の処罰をあらわしていたことにあったのでした、
一之瀬由利子は、女子高校の高等部・中等部の女生徒たちから憧れの存在として、
人気のあった女性であったことは事実でした、しかし、どのような美しい女性であったとしても、
不埒な性根と行動は、悪をあらわす恥辱の姿をあらわとさせることでしかありません、
白木の十字架に磔にされた、全裸の女性の姿、
人間として戒められるべき、不埒な行為を犯した者が処罰されるありさまを見て、
あのような女性と関わることの悪をすべての生徒は感じたことにあるはずです、
悪の何たるかを知ることなしに、善の意味はわかりません、
悪は、恥辱の晒しものとされることで、善を呼び覚ますものなのです、
そのようにして、人間の歴史は、善をあらわしてきたことにあるのです、
ましてや、一之瀬由利子のような悪をあらわす者へ生まれ変わろうなどと考えることは、
支離滅裂の不道徳であり、そのような考えを抱く荒唐無稽は、
無知を如実とさせていることでしかありません、
善は、絶対に、否定されるものではないのです、
善は、悪が栄えれば、それだけ、光輝を燦然とさせるものにあることだからです。

工藤安芸子は、一之瀬由利子が退学させられたという処罰に対して、
それ以上のことを考えるということはしませんでした、
従って、次のような事情は知る由もないことにありました、
慎ましやかな愛くるしい美貌をもった、十六歳の少女がいました、
その少女に、一之瀬由利子は近付いて、話しかけました、
「もし、お時間が許されることなら、私の家へ遊びに来ませんか、
あなたに、きっと、気に入ってもらえることがあるはずです」
少女は、同じ女子学校の最上級生で、
生徒たちからは、憧れの的とされている相手から、選ばれたように誘われて、
清楚な顔立ちの美しさ、艶やかで長い髪の美しさ、
セーラー服姿のしなやかな姿態の美しさにのぼせ上がる思いになっていました、
断る理由などありませんでした、
差し出されたほっそりとした綺麗な手を取るだけでよかったのです、
そして、連れて行かれた、一之瀬由利子の住まいでした、
立派な門構えの大きな屋敷、その門をくぐらされ、広い中庭を通らされ、
玄関先まで連れていかれると、
「大丈夫ですわ、気がねなどなさらないで……
家には、叔父しかおりません」
一之瀬由利子は、複雑な装飾の施された木製の扉を開けて、
洋館風の大きな建物のなかへ案内するのでした、
なかへ入った瞬間、少女は、そのありさまの圧倒的な異様さに、
口をぽかんと開けたまま、見つめるばかりになってしまいました、
玄関は、広々としていて、そこから天井に向けて、三階の高さまで吹き抜けとなっていて、
各々の階へ上がるには、その場を中心として、
ぐるりとした螺旋を描いている階段を昇るようになっていたのです、
全体は、各所に小さな照明がありましたが、光と闇とが交錯する、
明るいとも暗いとも言えない薄闇を感じさせ、その天井を眺めていると、
何処までが行き止まりであるのか分からないような曖昧とした高さが感じられて、
めまいさえ覚えさせられるものがあるのでした、
それと、ほのかに漂っている香りがあったのです、
その胸を詰まらせる芳しさを現実にあらわしたら、
まるで、そこに立つ、一之瀬由利子の美しさを思わせるものにあったのです、
少女は、黒眼がちの深い陰翳のあるまなざしで、
自分の方を見つめ続ける相手を美の化身のようにさえ感じたことにありました、
「あなたと私は、出会わなくてはならない、ふたりだったのです、
ですから、あなたは、私に気がねもいらないし、
この家に気がねをすることもないのです、
あなたのお家だと思って、くつろいでください」
一之瀬由利子は、優しい微笑を美しい顔立ちに浮かべて、そのように語りかけてくるのでした、
少女は、憧れる先輩から、心を開いたように話される言葉を頂いては、
ただ、舞い上がる思いにあるだけでした、
それから、少女は、華奢な手を取られると、
誘われるようにして、螺旋の階段を上へ上へと向かわされたのです、
三階の入口まで昇る階段は、ぐるぐると回転するように、長さを感じさせるものでした、
思っている以上の高さへと上がるような気にさせるものがありました、
少女は、手摺りから、恐る恐る、階下を眺めやりしましたが、
建物のなかには、ひとの気配がまったく感じられず、一階の床は、深い陥穽のように見えました、
不安はありましたが、しっかりと握り締めてくれる温かい手、
しっかりと向かわせてくれる足取は、信頼を感じさせるものを伝えてくることにあったのです、
そして、ようやく、たどり着いた三階、
そこの曲がりくねった廊下を歩かされていく頃には、
不可思議な雰囲気を感じさせる家も、
美の化身にふさわしい神秘があるのかもしれないと思えるようになっていたことは、
一之瀬由利子を思慕していることにあると実感させられたことでした、
「ここが私の部屋です、
お入りなって……」
そのように言われて、開かれた木製の重々しい扉、
そこは、まばゆい太陽の光が窓から差し込む、広々とした部屋にありました、
部屋が広いと感じられたのは、
中央に、純白の絹のシーツが敷かれた大きなベッド、
壁へ掛けられた、大きな額縁の絵画しかなかったからでしたが、
一之瀬由利子は、少女の手を離して、部屋を自由に見させるようにすると、
扉を静かに閉めて、鍵を掛けたのでした、
少女は、その様子に気付きましたが、閉じ込められたと感じるよりも、
思慕する相手と二人きりになったという実感からは、胸が高鳴るばかりにありました、
少女は、興奮を感じている様子を相手に悟られまいとして、何気なさを装いながら、
絵画に興味がある素振りで、その前へ立ちました、
見た瞬間、少女は、思わず、あっと叫び声を上げていました、
それは、驚愕としか言いようのない絵画にあったのです、
茫然となったまなざしをただ注がせるものにあったのです、
絵画に描かれた女性は、一之瀬由利子でした、
艶やかで長い黒髪の美しさ、高貴を感じさせる毅然とした意思のあらわされた顔立ち、
いま、そこに立つ、相手そのものでした、
その女性が生まれたままの全裸の姿をあらわとさせていたのです、
正面を向かせて、すっと立たせた姿勢は、ほっそりとした首筋になよやかな両肩、
可憐な乳首をつけて綺麗な隆起を見せるふたつの乳房、優美すぎるくらいに艶かしい腰付き
しなやかに伸ばさせた両脚の美麗は、
艶やかな太腿の付け根に茂らせる漆黒を夢幻の靄のようにふっくらと漂わせたものでしたが、
その細い両腕は、頭の上へと持ってこられ、
重ね合わされた華奢な両手首は、縄でしっかりと縛られて、高々と吊り上げられていたのです、
しかし、驚愕は、それだけのことではありませんでした、
腹部を張り裂けるばかりに蒼白く膨らませ、そのうごめきに身悶えするように、
しなやかな両脚を悩ましくよじらせている、臨月をあらわす妊婦の姿にあったのでした、
「そのような絵画では、あなたをびっくりさせるだけかも知れませんわね、
それは、私の母が描かれたものです……
母は、私を産んで亡くなったので、私は、母をまったく知りません、
その絵画は、母の形見のようなものです」
少女は、込み上がる得体の知れない恐ろしさと不安に駆られて、
すぐにも、この場を立ち去りたいと思いましたが、
となりへ立った一之瀬由利子は、温かな手で少女の手をしっかりと掴んだのです、
その握力は、何をするの、離してという言葉を封印される頑なさがあり、
みずからよりも優る存在を意識させられては、
少女は、逃れられない場にいるのだと思わざるを得ない状態に追い込まれたのでした、
それから、熱心に説明する言葉を綺麗な声音で聞かされたときには、
ただ、聞くことしかできなかったのです、
「若い妊婦が隠すものを奪われた全裸の姿を縄で縛られているありさまというのは、
確かに、残酷で非情で悲哀のある光景があらわされていることにあります、
しかし、この絵画には不可思議なところがあるのをあなたに見てもらいたいのです、
残酷で非情で悲哀のある状態に晒されている、女性の顔立ちの表情です、
苦悶や苦痛に歪められた表情にあるのが普通だと言うならば、
この女性のうっとりとなった表情の美しさは、喜びの極みがあらわされていることを感じさせて、
いつまでも眺めていたいと思わせるほどの不可思議があることです、
私は、私の母だから、そのように見ることができることだとは思っていません、
あなたに是非見てもらいたかったのは、あなたにもその不可思議は感じられることにあるか、
私が思いを寄せるあなたであればこそ、答えを頂けることだと思ったからです、
あなたは、私に付いて来てしまった、母の絵画を知ってしまった、
あなたは、もう、元へ戻るということはできません、
認識というのは、そこへ至ったならば、元へ戻すことのできないありようのことなのです、
あなたには、先へ進むしかないことがあるだけなのです、
部屋の扉には、鍵が掛かっています、その鍵を私から奪い取りますか、
窓から地上までは三階の高さがあります、窓を開けて飛び降りますか、
あなたは、逃げることのできない立場にあります、
怖いですか? 
いいえ、怖くはありませんよ、私が一緒です、
私は、あなたに言いました、
あなたと私は、出会わなくてはならなかった、ふたりであるということ、
私は、あなたを見かけたときから、
あなたが私のことを思う以上に、あなたのことを思っていたことは、事実です、
もう一度、絵画を見て頂けますか、
母の表情をしっかりとご覧になって頂けますか、
そして、何が見えて、何が感じられるかの答えを頂ければ、本望です……」
少女は、手を掴まれながら、向き合わせた顔立ちを微動だにさせず、
真剣な表情を浮かばせて語る一之瀬由利子に対して、ゆっくりと頷くことにあったのでした、
相手は、しっかりと掴んでいた手を離しました、
少女は、再び、複雑な装飾の施された木製の額縁に入った、
等身大の大きさのある絵画の前へ立ったのでした、
覆うものひとつ許されない、全裸を縛られた妊婦は、
残酷で非情で悲哀を漂わせる状態に晒されていることにあるとしか見えませんでした、
しかし、その顔立ちの恍惚となっている美しい表情を見つめ続けていると、
不可思議の感じられることは、確かにあったのでした、
それは、驚きでした、
その表情は、そのままずっと見続けていたいと感じることのできる美しさにあったからです、
そのように気付かされると、少女は、思わず、一之瀬由利子の方へまなざしを向けていました、
そして、清楚な麗しい顔立ちに穏やかな微笑を浮かばせて、
しっかりと頷く、美の化身にあることを認識したのでした、
一之瀬由利子は、おもむろに、身に着けていたセーラー服を脱ぎ始めていました、
スリップも、ブラジャーも、ストッキングも、ショーツに至るまで、
ためらいもあらわさずに取り去って、少女の前に全裸の姿をあらわとさせたことにありました、
少女は、行われていくことの大胆さに対しては、ただ、唖然とさせられるばかりにありましたが、
正面を向かせて、すっと立たせた姿勢は、ほっそりとした首筋になよやかな両肩、
可憐な乳首をつけて綺麗な隆起を見せるふたつの乳房、優美すぎるくらいに艶かしい腰付き
しなやかに伸ばさせた両脚の美麗は、
艶やかな太腿の付け根に茂らせる漆黒を夢幻の靄のようにふっくらと漂わせたものにありました、
その生々しさは、少女の胸を一気に高鳴らせ、縛られた妊婦の表情を見ていたときに感じた、
喜びとも、幸福感とも、快感ともつかない気持ち良さにのぼせ上がらせたことにあったのでした、
みずからが考えていることや感じていることをまとめようとしてみました、
しかし、まるで、言葉となって結ばせることができなかったことは、それよりも、
相手があらわとさせた、あまりにも優美な姿態が誘うことの高まりが優っていたことにあるのでした、
一之瀬由利子が全裸をあらわしてまで、みずからを開いて見せることに、
少女は、高鳴る胸の鼓動が頬を火照らせ、
思慕の念がますます高まるのを感じていることにあるばかりだったのです、
一之瀬由利子は、ゆっくりと、少女へ近付いてくると、華奢な両肩へ両手を置いて、
引き寄せるようにしながら、唇を重ね合わせてきたのです、
少女は、びっくりしましたが、拒否する素振りをあらわすことはありませんでした、
ふっくらとした柔和な感触は、のぼせ上がらせていた官能を一気に焚きつけて、
ふわふわとさせる、夢幻の心地よさへ誘わせるものがあったからでした、
思いを寄せる相手から成される、口づけの愛撫は、
心地のよい官能をいっそう掻き立てられていくことになるばかりでした、
重ね合わされた相手の綺麗な唇が強く弱く押し付けられ、
左右へ柔らかく擦られていくと、ついには、少女の可憐な唇も開き加減となって、
のぞかせた舌先を口中へ差し入れられてきたときには、
少女も、大変なことをしているのだという思いにありました、
胸は高鳴り続けて、ぬめる舌先の甘美な感触は、
含みたいと望ませるものでしかなかったことにありました、
うねりくねり、もつれ合わされる、舌先と舌先の愛撫は、執拗に、熱心に続けられましたが、
これ以上の先は頂上へ行くしかないという官能の高ぶりを少女が感じたとき、
一之瀬由利子は、おもむろに、その舌先の愛撫を止めて、身体を離させたのです、
もはや、戻ることのできない思いへ至らせられたことを感じる、少女は、
みずからの手で、身に着けているセーラー服を脱ぎ始めたのでした、
スリップも、ブラジャーも、ストッキングも、ショーツに至るまで取り去ったことにあっては、
美の化身のあらわす優美な全裸と同様の姿が示されたのでした、
相手と同様にあるという実感は、喜ばしいということでしかありませんでした、
しかし、じっと眺めやる相手のまなざしを受けては、羞恥は激しく込み上げました、
少女は、真っ赤にさせながら、顔立ちを俯かせてしまったのです、
「綺麗な顔立ちをあげてください、
あなたの顔立ちとありのままの美しい姿態を見ることは、私の喜びにあることなのです、
あからさまとさせたみずからの姿態に感じる羞恥があるからこそ、
みずからの思いと行いに対して、深く感じることのできる女性にあることです、
深く感じる女性にあるからこそ、女性として成し遂げられることがあるのです、
そのように生きることにおいて、毅然とした態度が取れるのです」
はっきりとした口調で言われたことは、
少女の慎ましやかで愛くるしい美貌をあげさせ、相手をまじまじと見つめることをさせました、
一之瀬由利子の毅然とした表情には、
信頼を寄せることのできる女性にあると感じさせるものがありました、
「私は、あなたに伝えたい思いがありますと言いました、
それは、これです」
そのように言いながら、手に携えてきたものを見せました、
麻縄の束でした、
少女は、縄を見せられて、驚きを感じました、
思わず、絵画の方へまなざしを投げずにはいられませんでした、
両手首を縛られて吊るされた、全裸の妊婦の姿……
少女にとっては、ただ、どきどきとさせられるばかりのことにありました、
いったいこの先に何があるのかわからないという困惑が渦巻いていることでもありました、
一之瀬由利子は、その美しい顔立ちを毅然とさせたまま、このように告げるのでした、
「この縄は、あなたを縛るための縄です」
その言葉を聞かされるなり、少女は、心臓が破裂しそうなくらいに高鳴って、
成熟へと向かう、瑞々しい可憐な全裸は、震えさえあらわし始めたことにあったのです、
縄で縛られる、しかも、全裸の姿態を……
想像もしたことのない困惑は、
螺旋階段をめぐるめまいのようなぐるぐるとした思いを込み上げさせて、
一糸もまとわない全裸の姿態を、ただ、足をすくませるばかりにあるのでした、
「私が思いを寄せるあなたに成す行為です、
心配は、要りません、あなたを傷付けるために行う行為ではありません、
苦悶や苦痛や悲哀を与えるために縛る縄ではないのです、
私があなたを縄で縛るのは、
あなたにも、私が感じることのできた、母の法悦を知ってもらいたいからなのです、
絵画に描かれた母の恍惚となった美しい顔立ちは、いつまでも眺めていたいと思わせるほど、
喜びや快感の心地良さや幸福感があらわされている法悦にあります、
それは、母の意思と性的官能があらわさせていることにあるのです、
全裸の妊婦が縄で縛られ、残酷で非情な状態に晒されている姿を見て、
あなたが感じた、不可思議の思いは、意思への性的官能の関与に依ることにあるのです、
母や私と同様に、あなたにも、あることなのです」
一之瀬由利子は、さらに、間近へ歩み寄りました、
少女は、難しいことが言われていると感じさせられました、
思慕を寄せる相手の大人びた態度は、圧倒されるばかりのことにあるのでした、
少女に理解できたことは、みずからのほっそりとした首筋へ、麻縄を掛けられた事実でした、
少女は、羞恥・不安・恐れを意識させられていましたが、
一之瀬由利子があらわす言葉の不可思議は、相手への信頼を損ねることなく、
あらがう言葉も、抵抗する素振りも、意味がないと感じさせられることにあったことでした、
少女は、されるがままにあることを受け入れたのでした、
ふた筋とさせた麻縄が細いうなじへ掛けられて、
それは、正面へ垂らされ、首元から下腹までの五箇所、
首元、乳房の間、鳩尾、お臍の上部、お臍の下部へ等間隔の結び目が作られていきました、
それから、太腿を開くように優しく促されると、縄の残りを股間へ通されて、
可愛らしく引き締まった尻の亀裂からたくし上げられました、
その際に、女性をあらわす割れめへ縄がはめ込まれるように整えられたことは、
少女に驚愕の思いを伝えましたが、じっとなったまま、されるがままにあるのでした、
背後の縄は、うなじに掛けられた縄へ通されると、だらりとした縦縄とされました、
二本目の縄が用意されると、ふた筋とされた縄頭が背後の縦縄へ結ばれて、
左右へ振り分けられ、身体の正面まで持ってこられました、
正面へ持ってこられた左右の縄は、首元と乳房の間にある結び目の間へ通されて、
再び、背後へ引かれるようにされていくことで、そこには、綺麗な菱形があらわれるのでした、
少女は、顔立ちをしっかりと上げて、一之瀬由利子の丁寧な所作を感じながらも、
まなざしは、みずからの姿態の上へ掛けられていく縄にあるばかりでした、
菱形は、首元と乳房の間、乳房の間と鳩尾、鳩尾とお臍の上部に菱形を作り出すと、
その縄尻は、背後の縦縄へ結ばれましたが、少女は、綺麗な菱形が一つずつ作られていく度に、
女性をあらわす割れめへはめ込まれている縄の張力が増すのを感覚させられ、
それが女芽や陰唇や肛門を刺激される、初めての意識には、戸惑うばかりのことにあるのでした、
三本目の縄が用意され、背後の縦縄からお臍の上部とお臍の下部に菱形が作られると、
縄が掛けられた瞬間から、どきどきと始まった、少女の胸の高鳴りは耳にまで届いて、
がんがんと脈打つ響きは、慎ましやかに茂らせた漆黒の陰毛を分けて、
もぐらされている縄が伝えてくる甘美な疼きと同調するようになっていったことは、
愛くるしい美貌を火照らせて、まなざしを一点に凝視させ、唇を固く結ばせることにありました、
しかし、少女は、どのようなことが行われていくことにあっても、
一之瀬由利子から選ばれた女性であると言われたことを信じるのでした、
その思いがされるがままになることを引き受けさせていました、
縄で縛られることは、苦悶や苦痛や悲哀を与えられることではないと言った相手の言葉は、
むしろ、喜びや快感の心地良さや幸福感がもたらされる不可思議を感じさせていたのでした、
それは、四つ目の菱形が作られて、その残りの縄が背後で交錯されて、
優美な腰付きのくびれから、再び、前面へもってこられ、
すでに、女性をあらわす割れめへ埋没させられている縄を左右から挟むような具合で、
股間へ通されたことにあらわされました、少女にとっては、衝撃でしたが、
可愛らしく引き締まった尻の亀裂からたくし上げられた縄が腰縄へ絡められて結ばれ、
背後の縦縄もその箇所へ縄留めがされたときは、
覚悟を決める思いを求められていると感じさせられることにあったのでした、
その通りにあるとされるように、一之瀬由利子からは、
「両手を背後へまわしてください」
と求められることにあったのでした、
少女は、もう、されるがままのことを行うことしか考えていませんでした、
おずおずと背後へまわさせた華奢な両手首は重ね合わされ、
左右から股間へ通された縄の残りが使われて、後ろ手縛りとされたことにあるのでした、
縄化粧と言えるような菱形の綺麗な紋様がふたつの乳房や可愛らしい臍、
撫でやかな両肩やほっそりとした両腕、優美なくびれの腰付きを際立たせている姿態にあって、
女の羞恥の割れめが縦縄と左右からの麻縄を深々と埋没させているありさまは、
残酷で非情で悲哀な状態に晒されている姿にあると見受けられることでした、
しかし、少女は、それに対して、苦悶や苦痛を感じていることにはありませんでした、
込み上げさせられた性的官能は、愛くるしい顔立ちを火照りあがらせていました、
直立して立たせた姿態を崩さずに、毅然とした表情さえあらわしていたことにありました、
一之瀬由利子は、全裸を縄で緊縛された少女の姿態をまじまじと見つめながら、
「とても綺麗です、
それは、亀甲縛りと呼ばれている、大変に美しい縄掛けですが、
その美しさが際立つのは、女性がその縄掛けをされていることにあるからです、
菱形の文様があらわす意味は、正方形が歪められたもの、
つまり、四つの角度が同一の整合性的なありようにあることよりは、
そのありようは、感覚的であり、直感的であり、具体的であり、柔軟や豊穣にある、
つまり、女性の象徴があらわされるということにあるからなのです、
あなたは、女性を見事にあらわしていることにあるということです」
一之瀬由利子は、そのように言うと少女に近付いて、
背後に垂れている縄尻を取り、引き立てるようにして、
純白の絹のシーツが敷かれた大きなベッドの方へ向かわせるのでした、
「あがってください」
言われるままに、少女は、もどかしい素振りをあらわしながら、ベッドの上へあがりました、
同じようにあがった、一之瀬由利子は、少女を優しい仕草でそこへ仰臥させると、
ベッドから下りて、告げるのでした、
「その位置から、母の等身大の絵画が良く見えるはずです、
母や私が感じることのできた法悦に至るまで、
その絵画があらわす不可思議を堪能して頂きたいのです」
それから、相手が部屋を後にしたことは、
木製の扉の重々しい開閉の音と施錠される音が伝えてくることにあったのでした、
広々とした部屋に絵画と二人きりにさせられた、少女は、不安や恐れというものを感じるよりも、
一糸も身に着けない、身にまとっているものは麻縄だけの全裸の姿態にあって、
亀甲縛りという縄掛けで肉体を圧迫されることによって掻き立てられる官能からは、
愛くるしい綺麗な顔立ちの両頬を赤く上気させて、
縄の菱形の文様に彩られたふたつの乳房の可憐な乳首を立ち上がらせるまでにあったのでした、
一之瀬由利子と部屋に入ったときは、まばゆい太陽の光が窓から差し込んでいましたが、
今は、もう、黄昏時の薄闇が窓から忍び込んでいる時刻にありました、
照明のともされていない部屋は、間もなく、暗闇に支配されるだろうことは分かりましたが、
股間から突き上がってくる甘美な疼きを双方の艶やかな太腿の内側に感じたことは、
ああっ、ああっ、という甘美な声音を思わずもらさせて、
肉体に掛けられた縄の拘束に、頭をめぐる思いは、上ずっていくばかりにあるのでした、
縦縄と左右からの麻縄を深々と埋没させている羞恥の割れめが湿り気を帯び始めたことは、
上ずる思いをもっと高みへと引き上げて欲しいという欲求となっていくことにありました、
しかし、後ろ手に縛られている両手の不自由は、それを容易にはさせません、
股間から突き上がるように疼いてくる、内股をぞくぞくとさせられる快感は、
ただ、もどかしいばかりのうねりを繰り返すだけで、
両脚を悩ましく悶えさせるほかに手立てがなかったのでした、
いま、ここに、一之瀬由利子様があらわれて、
そのほっそりとした美しい指先を疼き上がっている股間の箇所へ挿入して頂けたら……
一念のその思いは、高ぶらされる官能をあと一歩のところまでにしていたのでした、
我慢がしきれない、けれど、成し遂げることができない、
頂上を間際にしてふらふらさまようばかりの官能の高ぶりに限界を感じていた、そのときでした、
美の化身、一之瀬由利子様があらわれたのでした、
窓から差し込む月の光に映し出されて、光輝な姿をあらわとさせたのです、
美の化身は、生まれたままの全裸の姿をあらわとさせていました、
正面を向かせて、すっと立たせた姿勢は、ほっそりとした首筋になよやかな両肩、
可憐な乳首をつけて綺麗な隆起を見せるふたつの乳房、優美すぎるくらいに艶かしい腰付き
しなやかに伸ばさせた両脚の美麗は、
艶やかな太腿の付け根に茂らせる漆黒を夢幻の靄のようにふっくらと漂わせたものにありました、
その細い両腕は、頭の上へと持ってこられ、
重ね合わされた華奢な両手首は、縄でしっかりと縛られて、高々と吊り上げられていました、
腹部を張り裂けるばかりに蒼白く膨らませ、そのうごめきに身悶えするように、
しなやかな両脚を悩ましくよじらせている、臨月をあらわす妊婦の姿にあったのでした、
清楚な顔立ちの高貴な美しさは、恍惚をあらわした表情の艶麗と妖美にあって、
喜びの極みにあることを明確に伝えていることにあるのでした、
ああっ、ああっ、一之瀬由利子様、私にも授けてください、お願いです、
あなたが感じている法悦を!
少女は、食い入るように、全裸の姿を縛られた妊婦の絵画を堪能していました、
少女の美の化身に寄せる熱烈な思慕は、ついに、
あっーという甘美な叫び声を伴って、快感の絶頂へ至ることをさせたことにあったのでした、
純白の絹のシーツが敷かれた大きなベッドの上には、
後ろ手に縛られ、亀甲縛りを施された、優美な肉体が絶頂にあるという痙攣をあらわにさせて、
びくっ、びくっとうごめく、法悦のありさまをあらわす女体としてあるのでした、
少女の愛くるしい美貌が恍惚に漂わされる美しさにあったことは、
窓から差し込む月の光が少女の全裸の緊縛姿を映し出していることで明らかでした,
その少女の名前が高倉真美であったとしても、不思議はないことにあったのです。


☆NEXT

☆BACK

☆九つの回廊*牝鹿のたわむれ