借金返済で弁護士に相談




7.  『S&M』  第6章  S



ドーリア式の針形の柱頭をした太い円柱に四方を支えられ
見上げれば 天空にまで届くような錯覚を起こさせる薄暗い天井
四方の壁を鮮やかに彩るステンドグラスからの光は
ひび割れた大理石の床へ 荘重というよりは 暗澹とした趣きを与え
ほころびが多々見られる 豪華な真紅の色褪せた絨毯を際立たせていた
白木というには黒ずんでいたが 堂々とそそり立った十字架と向かい合って
染みだらけの大理石造りの玉座が据えられていた 大広間であった
文化遺産として申請されてもおかしくなかった由緒ある西洋建築であったが
それができなかったのは ひとえに すでに崩壊寸前の状況にあったからだった
しかし そのような下世話な事柄には無縁であるという尊厳を漂わせて
館の五代目当主は 深いフードの付いた 裾の長い真っ黒なガウンを身に着け
顔付きは 青白い感じと眼光だけがぎらついているのがわかるだけで
表情が正体不明の人物と言えば そのようにしか見えないありようにあった
真紅の大きなリボンで飾られたベニヤ板の木箱がその前へ置かれていたが
五代目が痰を咽喉につまらせたような声音を響かせてうなずくと 
黒い頭巾に黒いタイツの半裸の格好をした者たちがその蓋を開き始めた
掛けられていた縄をすべて解き外され あらわされたのは
溌剌とした輝きに満ちた 純白の優美な生まれたままの全裸の姿だった
その少女の放つ白い輝きは ただでさえ まわりを明るくさせるほどであったが
暗澹とした雰囲気のなかにあっては まばゆいくらいのものとしてあった
床へ立つように強いられた美雪は 可憐な顔立ちを俯かせ
ほっそりとした両腕で 胸のあたりと下腹部を覆い隠して 羞恥を滲ませていたが
しっかりと身体を見せよというしわがれ声にびっくとさせられて
おずおずと言われるがままになっていくのであった
その美しい顔立ちが上がった瞬間だった
少女は 手で口を押さえながら 突然 笑い出したのである
だって おじさまの格好ったら
スペース・オペラにあらわれる皇帝みたいなんですもの! おかしいわよ!
ほっ ほっ ほっ ほっ ほっ
可愛らしい声を上げて笑い続ける少女に
五代目当主は 顎をしゃくり 合図を送るのだった
すると 黒頭巾黒タイツの半裸の男が少女へ近づき
大理石の床を乗馬鞭で激しく叩いて 威嚇をあらわした
それには 美少女も びっくりとなって身をすくませると しゅんとなってしまった
まあ 初めての会見であるから 大目に見て 許そう
まだ おまえは どうして そこにそうしてあるのか わかっていない!
これから 私が話すことを しゃんとして よく聞くことだ!
当主は 荘重な声音で申し渡すのであったが
ただの館の主よりも格の高い 皇帝と言われたことはまだしも
おじさまと最初に切り出されたことは おもしろくないことだった
黒頭巾黒タイツ男も それを察して 合いの手を入れるように 鞭を鳴り響かせた
美雪は 思わず 学校にいるときのように 気を付けの姿勢を取るのだった
スペース・オペラの皇帝のような当主は 
溌剌とした輝きに満ちた 繊細な漆黒の翳りが夢幻の美しさを漂わせる
純白の優美な生まれたままの全裸の姿をじっと見つめながら
私の話というのを始めた
この<上昇と下降の館>へよく来た 歓迎しよう
私は 館の五代目当主だ
私は 現在のおまえの身上と境遇からは 天上にあるに等しい
だから 以後は 会見も許されることはない
美雪は 思わず 可憐な顔立ちを上げて
天空にまで届くような錯覚を起こさせる薄暗い天井を見やっていた
どこを見ている! 勝手な振る舞いをするな! 小娘!
おじさまがまた怒ったので 美少女は はいと背筋を正した
私は おまえがここへ連れて来られた理由をこれから話すが
それは そのように宣告を受けたものと おまえは 理解すべきことだ
もし おまえが理解に及ばないと感じたとしても
それは おまえが納得できないというだけで 充分に解釈のできることだ
ここへ連れて来られた女は 事前審査が行われた上の選ばれた生贄であるから
私の話を解釈できない脳足りんは あり得ないということだ!
美雪は じっと相手を見つめて 聞いているのだった
おまえは これから 愛奴というものに仕立て上げられるために
教育・調教・飼育される身上と境遇に置かれることになる
愛奴というものがどのようなものであるか おまえは 知る必要がない
おまえが愛奴となれば 愛奴がおまえの知性であるからだ
おまえの知性は おまえが愛奴として生きる存在理由であるからだ 
おまえは そのような意味不明の存在になることに対して
当惑や躊躇 不安や恐怖を感じるかもしれないが 心配は まったく不要だ
わが祖先の偉大な初代当主が西洋の最先端性科学思想として導入して以来
どのような風雪の時代にあっても 脈々と受け継がれてきた
愛奴の教育・調教・飼育の教育実習であり
その偉大な実績と成果があってのことだからだ
積年のたゆまぬ努力と苦労もなく 単なる思い付きの発想から生まれるような
そんじょそこらの安手な性の思想などは 比べれば ごみに等しいということだ!
ここで 五代目当主は 咽喉に痰が絡んで
しばらくの間 咳き込んでいた
美少女は ハンカチを差し出してあげたいと思ったが
あいにくの全裸では 持ち合わせがなかったのだった
ようやく 続けて
おまえは 女である おまえのその全裸の姿がよくあらわしていることだ
女である以上 被虐に晒されてきた歴史をあらわす存在である
おまえの女としてのDNAがそうならざるを得ない宿命とさせていることだ
従って 女は 被虐に晒されたありようにあって 最も女をあらわし
最も女であろうとし 最も美しい女の姿をあらわしてきたという歴史のあることだ!
人間の歴史過程であることであれば おまえも その一翼を担うことは
名誉であり 誇りとなることではあっても 恥辱や汚辱などでは決してない
たとえ その身上と境遇が恥辱や汚辱に晒される残酷にあっても
歴史的存在のおまえは 最先端性科学思想によって 庇護されているからだ!
そこで 再び 咳き込みそうになる間があって
歴代当主の血と汗と涙によって 現在では お笑いタレントでさえ
公共の番組で 堂々とSMを語り 流布されるという時代となったのである!
そのSM サディズムとマゾヒズムは 人間にある属性であれば、
おまえのなかにも それは備わり それは おまえが女であるということにおいては
マゾヒズムが優勢となる性を所有しているということでもある
被虐に晒される歴史的女性存在の自己同一性の立証ということだ!
女が教育・調教・飼育によって生まれ変わる
愛奴という存在が マゾヒズムの極致をあらわすということは
最高の女性の創造という評価を得ている 学術に裏付けされた立証であるのだ!
おまえがいま 当惑や躊躇 不安や恐怖として感じていることは
如何に おまえの無知から生じていることであるか これからわかることになる
愛奴の叡智 それに目覚めるのが おまえのあるべき本当の姿だからだ
さあ 私に おまえの割れめの箇所をよく見せなさい!
そこまで 一気に漕ぎ着けた 五代目当主の話であったが
最後の言葉には はっとさせられ どきっとなる 美雪だった
見ず知らずの複数の男性の前へ 生まれたままの全裸を晒させていることが
すでに 可憐な顔立ちを赤くさせるくらいの羞恥であったことなのに
女性の最も恥ずかしい箇所をあからさまに見せろと言われても
という困惑へ沈み込んでいる暇もなかった
 近づいてきた黒頭巾黒タイツの者たちによって
少女の全裸は 左右から抱きかかえられ しなやかな美脚を押さえられると
これ見よがしの開脚の姿とさせられていくのであった
ああっ いやっ! いやっ! やめてっ! やめてっ!
懸命にあらがう声音などか弱いことをあらわすだけのことにすぎないと
黒頭巾黒タイツの者たちは 眼も悪くなってきている当主のために
剥き晒された生贄を差し出すように 間近とさせていくのであった
それを 当主は 身体を前へ大きく乗り出せて 覗き込んだ
そればかりでなく 長く強靭なピアニストのような指先で
スケールを弾くように 丹念に触れていくのであった
純白の優美な生まれたままの全裸の姿に負けるとも劣らない
溌剌とした輝きに満ちた 女の羞恥の割れめ
閉じ合わせた瑞々しい花びらは 深奥の清廉な鮮烈を慎ましく隠させ
わずかにのぞかせる女芽を至宝の小粒のようにきらめかせて
純潔に輝く至高の処女 ここにありという美しさがあるのだった
それを 皇帝の指先は ポロネーズのテンポに変えて
英雄的な意気込みで 出来具合を確かめるというように
撫でてはつまみ 押し広げては差し入れてを繰り返すのであった
羞恥と不安と恐怖から 眉根を激しく寄せさせ 綺麗な唇を噛み締めて
可憐な顔立ちを真っ赤にさせながら 必死にこらえていた美雪であったが
その執拗で念入りな愛撫には ついに
ああ〜ん ああ〜ん いやっ! いやっ!
可愛らしい声音を上げさせながら
じっとりする匂い立つような花蜜を滲ませるのであった
当主がコーダと言うばかりに 沈ませた指先の抜き差しを行えば
ああっ ああっと愛らしい甘美な声音をもらさせる少女は
女としての官能を持っている 女性のあかしをあらわとさせるばかりのことだった
しわがれ声の結核症状の老齢の伝統継承者のようであったが
血と汗と涙の偉大な実績と成果は 話半分のものではなかったのだった
よし B級だ!
おもむろに そのように告げて 演奏を終了させ 白黒つけた五代目当主だったが
中途半端に投げ出された美雪には まなざしを白黒させられることだった
よろしい 調教室へ連れて行き 早速 教育実習を始めるのだ!
命じられた黒頭巾黒タイツの者たちは 抱きかかえていた全裸を床へ降ろすと
立たせるようにするが 両脚がふらふらになっていて
やっとの思いで 立つ姿勢を維持させる美少女だった
だが 左右から添われ両腕を取られて 無理やり 歩まされそうになったときだった
待ってください!
身を振りほどくようにして 五代目当主の方へ 向き直ったのだ
教えください!
B級とは いったい どういう意味ですか!
毅然とさせた顔立ちで 重大質問をする 十七歳の生徒があったのである
真っ黒なガウンの深いフードの奥の表情は 伺い知ることはできなかったが
しわがれた声音は 明らかにせせら笑っていた
おもしろい女だ おまえみたいのは 初めてだ
ここへ連れて来られた女は 誰もが 羞恥と不安と屈辱と恐怖から
泣き出すか わめくか 打ちひしがれるか 失禁するかだけだった
おまえのように 笑ったり 質問をする女など 一人もいなかった
いいだろう 答えよう
B級は B級だ!
女の顔立ちと姿態と割れめの評価には ABCと三等級あり
B級とは 優れているが 探せば見つけられる 一般的な美を備えていることだ
A級 これは ほとんどまれにしかないが
一般には お目にかかれない至上の美しさの存在だ
社会的に公然とされている事柄は すべて 金銭が関わる意味を抜きにしては
価値評価のできないものとしてあるが A級の女の存在とは
そうした下世話なものとは無縁な 金銭に変えられない 社会的でない容姿のことだ
C級は 反対に 金銭的な目的のために すでに整えられた美の容姿だ
最初は いずれの階級に評価されても 最終的に 愛奴に生まれ変われば、
今度は その品質に応じてのABCの三等級が与えられることになる それは
社会へ送り出されることである以上 等級は 金銭的価値をあらわすことでしかない
わかったら 行け!
五代目当主は 手で振り払うように 指図するのであったが
待ってください! おじさま!
美少女は 色褪せた真紅の絨毯に立たせた純白の全裸を見せつけて
言い返すのであった
おじさまも 好き勝手にお話されたのですから
今度は 私の話も 死刑囚の最後の話のように 聞いてくださいませんか
私は 望むと望まないに関わらず
愛奴というものにされてしまうのでしょう? それが私の運命なのでしょう?
そうなったら 私は 死んだも同然、ですから、死刑囚みたいなもの
お願いです 聞いてくださいませんか よろしいでしょう?
美少女の大きく美しい瞳のまなざしは しっかりと相手へ向けられているのだった
黒い深々としたフードは 仕方ないというように うなずいていた
美雪は 相手へ一歩近づいて 
小さな両手を握り締めながら 話すのだった
おじさまがおっしゃったこと とてもわかりやすくて 理解できることでした
けれど 一言で言えば 古い 古臭いのです!
女性が被虐に晒されてきた歴史をあらわす存在であることは 確かです
しかし それは 女性の身体が受身の構造にあるからばかりではないはずです
女性の身体が受身のか弱い構造にあるから 被虐に晒される
それは 当然のことには違いありませんが それは それを正当化させる
常識と呼ばれる社会の制度・風習・風潮があってことではないのですか
人間には サディズム・マゾヒズムという性欲の属性が備わっていて
女性は 男性に比べては マゾヒズムの快感を感じる傾向が強い
そのことだって 社会的にそのように作られた女性だからではありませんの
宗教の戒律と社会常識に雁字搦めに縛られた女性にあれば
受身で感じさせられることに 快感や喜びを見出さなければ どこに見出すのです
性欲や性的官能は 純粋なもので 快感や喜びのためにあるものです
性欲や性的官能の快感や喜びを 罪悪と考える宗教性や常識のあるところでは
罪悪であるからこそ そこからの救済が求められるということにしかなりません
それは 少なくとも 私たちの普通の考え方ではありません
西洋の学術が導入されて追従する段階にあった時代のことで
いまもって それを振りかざす おじさまが古臭いと言っていることです
私のように女子でありながら
男子の意識を明確に持っている者からすれば
社会が新しい人間像を許容すれば 崩壊していくだけの学説でさえあることです
これからも 加虐や被虐の行為がなくなるということはないでしょう
しかし それが人間にある性欲の属性で行われていることだとされる限りは
その行為の正当性の根拠を保証しているようなもので
かえって、減少させない結果を生んでいることにしかならないのでしょうか
もっとも おじさまのおっしゃられるとおりです
社会的に公然とされている事柄は すべて
金銭が関わる意味を抜きにしては 価値評価のできないものとしてあります
有用な学説も その存命は 金銭を生むか生まないかに掛かっていることです
この大広間を見ては 崩れかかっているほど古びていて
修復さえできないということは その資金力がないことを明らかにしているようです
愛奴の需要が以前ほどなくなっているあらわれと感じるのですけれど
間違っていますか?
そうなると 愛奴の等級も ABCあったところで
価値下落が行われていることだとしたら 私が愛奴となることができたとしても
だいぶ叩かれた価格で売買されることになるのかと思うと 哀しいです
本当に 哀奴ですわね
言い過ぎてしまっていたら ごめんなさい
でも 私にとっても 女の一生のことですから……
長い艶やかな髪をなびかせながら 美雪は 丁寧に頭を下げると
清楚で可憐な美しい顔立ちを整然とさせて
向かわされる方角へとひとり歩き出すのであった
深いフードの付いた 裾の長い真っ黒なガウンが揺れるくらいに震えていて
憤怒をどのようにあらわしたらよいものか
抑えて尊厳を保つべきか 吐き出して威容を示すべきか
矛盾・苦悩・軋轢の状態にあるといった 五代目当主だった
言わせておけば、勝手放題のことを!
人生経験もない まだ 処女でもあるような小娘に何がわかる!
ひとの経営のことにまで 口出しなどしやがって!
眼の届くところから早く消えうせさせて 泣き喚くまで 鞭打たせろ!
愛奴の何たるかを身をもって悟らせろ!
しわがれ声を張り上げた怒声の咳き込む最後の言葉だった
美雪は 全裸の姿態を左右の黒頭巾黒タイツの者に支えられながら
薄暗く 湿気臭く 黴臭く 暗澹としているばかりの廊下を歩まされていった
その先にある調教室というのは 恐らく この雰囲気以上に
残酷で 悲惨で 淫猥で 絶望的な場所だと想像すると
そこで 最初に行われることが 泣き喚くまでの鞭打ちであれば
もう 生きている心地さえしないことだと涙の浮かぶ思いだった
大分歩かされたところへ至ったときだった
おもむろに 左右を支える黒頭巾黒タイツのひとりが尋ねていた
お嬢さん 本当に この館は危ないんでしょうかね?
百年に一度の経済危機だと叫ばれているご時世には違いない
その影響かと 三ヶ月も給与が不払いのままなんです
それって 危ないということなんでしょうか?
美少女は びっっくりして 相手の方をみたが 顔付きはわからなかった
だが 声音の感じから 真剣な思いが伝わってくるのだった
私は 経営の実際を知っているわけではありませんから
 いい加減なことは言えませんが
このくずれかかっている建物の感じと給与の未払いが実際にあるとしたら
経営はかなり苦しいと察するのが普通と思いますと答えるのだった
黒頭巾黒タイツは もうひとりの方へ向かって
そうだってよ お嬢さんの言うことは もっともかもしれない
辞めたところで ほかの就職口が難しいから ここにしがみついていたが
やはり 危ないかあ どうしよう?
それに対して 歩みを止めさせて もうひとりが答えていた
どうしようって 分かり切ったことじゃないか
少なくとも このお嬢さんを鞭打ったって 意味がないってことだ
ここには 組合もないから 取り合えず 労働基準監督署へ行くしかないだろう
今月の給料日も迫っているし 息子と娘の学費も支払わなければならない
まったく えらいこったなあ
黒頭巾黒タイツのふたりは 美雪から離れていくと
ぶつぶつと話し合いながら 反対方向へと去っていくのであった
ひとり 暗澹とした廊下へ 取り残された美雪だった
ここから 逃げ出すべきかしら……
それとも……
私のように女子でありながら 男子の意識を明確に持っている者
あそこまで 言い切ってしまったことですもの
そこから先へ 向かうべき道を進まなければ
本当の自立はできないことに違いないわ
美雪は さも 勝手を知っているわが家といった感じで
ずんずんと奥へ向かっていったのは
考えても埒があかなければ先へ進む 先へ進んでだめならまた考える
だめならリセット! というゲーム慣れしていたことのようであった
やがて 暗澹とした長い廊下は 突き当りとなって 行く手を塞いだが
そこには 開けようと思う者にしか見えない 頑丈な鋼鉄製の扉があって
その鍵もまた 望む者にしか手にすることができないものとしてあるのだった
美雪には その双方の思いがあったから そのなかへ入ることができた
鉄製の螺旋階段が下方へ伸びていて 地下深いところはまったく見えなかった
少女は ためらいもなく 注意深く 下へ降りていくのだった
降りていくにつれて 光の粒子が泡のように立ち昇ってくるのが感じられ
地下へ降り立ったときは 暗黒の世界であったが
一箇所から ぼおっと光り輝くものが見えるのであった
まばゆいばかりの光として感じられ
くらまされた眼は何も見ることができなかった
やがて 眼が慣れてくると 美雪の前には
白木の十字架が堂々とそそり立っていることがわかった
そこには 女の割れめも鮮やかに 生まれたままの優美な全裸を晒されて
清楚で愛くるしい顔立ちの美貌を輝かせた女性がはりつけられているのだった
ほっそりとした両腕を左右へ伸ばされ 華奢な手首を縄で縛られ
ふたつのふっくらとした乳房の愛らしさのある乳首を尖らせながら
艶かしいくびれの腰付きから下方へ垂れたしなやかな美脚の
揃えられたほっそりとした両足首を縄で縛られているだけの姿にあった
女性の羞恥の割れめも剥き出しのありさまであったから
残酷で 悲惨で 淫猥な処罰に晒されている女性と言えることだったが
美しい顔立ちには 快感の喜びをあらわす陶然となった表情が浮かんでいるばかりか
やるせなく 切なく 悩ましい 身悶えがしきりと繰り返され
甘美に喘ぐような声音がもらされ続けているのであった
性的官能の絶頂へ追い上げられていることは 確かなことだった
そのありさまを見上げるばかりの美雪であったが
ついに 思い余って 尋ねていた
あなたは 愛奴なのですか 愛奴だから 被虐に喜びを感じているのですか?
それに対して はりつけにされている女性は
艶やかで柔らかな黒髪を大きく揺らせながら かぶりを振って
いいえ 私は 私だから 女性の官能の極みを感じようとしているだけです
あなたにも できることですよ これは ただの白木を十字に合わせたものですから
と答えると 見上げていた美少女は
みずからがその十字架にいることを知るのだった
女の割れめも鮮やかに 生まれたままの優美な全裸を晒されて
清楚で可憐な顔立ちの美貌を輝かせながら はりつけられているのだった
ほっそりとした両腕を左右へ伸ばされ 華奢な手首を縄で縛られ
ふたつの瑞々しい乳房の愛らしさのある乳首を尖らせながら
しなやかなくびれの腰付きから下方へ垂れたしなやかな美脚の
揃えられたほっそりとした両足首を縄で縛られているだけの姿にあるのだった
女性の羞恥の割れめも剥き出しのありさまであったから
残酷で 悲惨で 淫猥な処罰に晒されている少女と言えることだったが
可憐な顔立ちには 快感の喜びをあらわす陶然となった表情が浮かんでいるばかりか
やるせなく 切なく 悩ましい 身悶えがしきりと繰り返され
甘美に喘ぐような声音がもらされ続けているのであった
性的官能の絶頂へ追い上げられていることは 確かなことだった
そして そのありさまをじっと見上げる者が前に立っていた
艶やかな黒髪の短い髪型に 瞳の大きい清楚な愛くるしさを漂わせた顔立ちは
少女と見間違えるほどの美貌で それを支えるほっそりとした首筋 
柔和な感じのなでた両肩 筋肉の薄い両腕と華奢な手首と小さな両手
優美なくびれをあらわす腰付きは 伸びた両脚のしなやかさを際立たせ
なめらかな腹部の形のよい臍の下 つつましく茂らせた漆黒の和毛のなかから
可愛らしいと言えば 小学生ほどの皮を被った陰茎を屹立させている男子だった
その男子が美雪へ尋ねていた
あなたは 女性だから そのような被虐に喜びを感じているのですか?
それに対して はりつけにされている美少女は
長く艶やかな髪を大きく揺らせながら かぶりを振って
いいえ 私は 私だから 女性の官能の極みを感じようとしているだけです
あなたにも できることよ これは ただの白木を十字に合わせたものですから
と答えると 生まれたままの姿にあった美少年は
みずからがその十字架へはりつけられていることを知るのだった
ほっそりとした両腕を左右へ伸ばされ 華奢な手首を縄で縛られ
ふたつの乳房の愛らしさのある乳首を尖らせながら
艶かしいくびれの腰付きから下方へ垂れたしなやかな美脚の
揃えられたほっそりとした両足首を縄で縛られているだけの姿にあるのだった
恥毛をすっかり奪い取られ 鮮やかに剥き出された 男性の羞恥の屹立であったから
残酷で 悲惨で 淫猥な処罰に晒されている少年と言えることだったが
綺麗な顔立ちには 快感の喜びをあらわす陶然となった表情が浮かんでいるばかりか
やるせなく 切なく 悩ましい 身悶えがしきりと繰り返され
甘美に喘ぐような声音がもらされ続けているのであった
性的官能の絶頂へ追い上げられていることは 確かなことだった
そして そのありさまをじっと見上げる者が前に立っているのであった
一糸もまとわない 生まれたままの全裸をあらわとさせた
清楚で愛くるしい美貌に 微笑みを浮かばせている女性だった
その女性は 優しく見守り続けるだけで 尋ねることはしなかった
少年は あとひと息で昇りつめるという 恍惚感のなかで答えるのだった
ママがぼくを心配してくれているというのに
つっけんどんな態度を取ってしまって 本当に ごめんなさい
ぼくは ママを愛しています
そのように言った瞬間だった
どっか〜んという轟音が彼方から響いてきて
がらがらと崩れていく騒音が長々と続いた
凄い音! いったい何の音かしら? 清楚で愛くるしい母の声がした
古臭いものが崩れ去っていく音ですわ 可憐な美雪の声がした
建て直すことのできない ノスタルジアだけを残して 消えていくんだ
ほとばしらせる絶頂の快感のなかで
美少年が言ったことだった――



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