13.縄による緊縛という結びの思想・四十八手 (27) <田代屋敷>という国家  借金返済で弁護士に相談



縄による緊縛という結びの思想・四十八手

(27)  <田代屋敷>という国家





<田代屋敷>は、日本国家の比喩にある、
このような認識を持つことは、日本民族に属する者であれば、奇矯なことではない、
『花と蛇』の作者である団鬼六がそのように比喩したということではない、
団鬼六の文章表現は、重大事態にあるというような比喩を見つけ出すことは困難であるくらいに、
その<単一・単純・単調>な表現は、素直・率直・真摯な態度をあらわしていることにある、
猥褻表現を目的として、猥褻表現に徹するという職人芸の域にあることである、
日本の職人芸ということにあれば、文学表現として、歴代の大家に引けを取らない点において、
自然現象である季節の変化と<感情による自然観照の情緒的表現>である人間の情動が一致している、
本居宣長の提唱した<もののあはれ>に準ずる、日本的表現ということにある、
従って、<比喩>などという小賢しい事柄を読み取るのは、読者以外にないことにある、
これまでにも、『花と蛇』という表現から多種・多様・多義の<比喩>が読み取られて来た実績からすれば、
例えば、資本主義の経済原理、差別・格差からの民衆革命、救済の菩薩像、自虐史観の容認……
これらに加えても、<田代屋敷>を日本国家の比喩として認識することには、
意外性はまったくないということである、むしろ、意外な状況にあると言えるのは、
『花と蛇』が単なる猥褻な性文学という意義での傑作にありながら、
<SMは、市民権を持った>と提唱される、
<公然とした露出>がその素直・率直・真摯な表現を貶めているというありようにあることである、
個人が各々に抱く、十人十色・千差万別・多種・多様・多義にある<性的倒錯>の志向に対して、
団鬼六の性文学としての表現は、充分な受け皿となる、猥褻を認識していることにある、
みずからの<性的倒錯>の志向を他者に対して隠蔽する自意識があるように、
『花と蛇』は、個人固有の要求に対する、秘密文学としての位置付けが自然であると言えることにある、
にもかかわらず、<公然とした露出>が正当化されることが継承・維持される状況にあるとしたら、
それは、日本国家が<倒錯>していることに依る、国民の<倒錯>の実態という証左でしかない、
<隷属することは、悦びである>という命題を超克できない、日本国家は、
みずからの存在理由を認識できないままに、外圧の時流に流されるだけの隷属にある自意識を、
<国内統治権・対外主権>の発揮であるとする<倒錯>にあるというありようである、
<倒錯>にあることならば、<正常>な状態を求めるということも必然的となるというありようである、
それは、<今こそが転換点であり、超克にあるときである>という自意識を促されることにある、
にもかかわらず、それが成し遂げられない事態にあることは、
もはや、絶対に逃げ出すことの不可能な<田代屋敷>へ監禁されたままの状態が意義される、
絶世の美人である、静子夫人の身上が明らかとするように、みずからのみならず、
人工授精で孕まされた子供やその孫、引いては、<隷属の万世一系>として、
奴隷の身上が決定付けられるということにある、
置かれている現状に対しては、危機意識を抱くことができないどころか、
希望も絶望も失われ、その性欲と性的官能に従って、
移り変わる季節のような情動のままに、それ以外の状態を意識することのない、
<もののあはれ>にあるという存在理由があらわされることである、
それは、<隷属・受容・翻案>の奴隷体質に幸福感を見い出すことである、
置かれている状況へ<隷属することは、悦びである>とする、現状維持では、
衰退・滅亡・廃棄を意義するものしか作り出せないという現実と未来が示されていることである。

国政を司る<自称最高指揮官>にあっても、
物語から読み取るということにおいては、ひとりの読者に過ぎなかった、
男性・女性をその魅力の虜にする、静子夫人という女主人公は、数多に読んだ日本の物語のなかでも、
最も凄艶な女性にあると感銘を受けたことにあった、だが、それは、極めて猥褻な物語だった、
他人に対して、容易に賞賛を吹聴するというわけにはいかないものだった、
便所でひとり、賞賛を快感に変えるしごきで満足を得られるということでしかなかった、
しかしながら、そうした陰湿な自慰行為も、噴出するばかりの若さにあふれた時代の挿話であって、
権力を執行できる立場にまで成長したときには、
みずからの硬直とした意思として、公然とさらけ出すことができるありようにあるのだった、
閣僚会議において、その意思は開陳され、<閣議決定>とされることが可能であったのである、
便所でひとり、静子夫人の媚態を想像しながら、悶々としたしごきに興じることに比べれば、
賞賛を共有できる仲間がいるということは、同様の情動にあることの確信を抱かせることだった、
日本国家の現在と未来は、その<閣議決定>に準ずることを意志できる状況にあったのである、
今、<緊縛美の夫人>は、豪壮な建物の一室にある、直径五・二メートルのマカンバの円卓の上に、
腰につけたバタフライひとつという優美な日本列島の半裸の姿態を仰臥させられている状況にあった、
<自称最高指揮官>を筆頭にして、
列席している二十人の男女に依って、間近なものとして眺められる裸体としてあることだった、
<新自由主義>と称される、縄による緊縛姿に晒されていたことは、
国民の自己責任において、その活力へすべてを委ねるべきだとするありようにあって、
企業本位の市場原理主義、民営化、規制緩和が行われていくことが示されていることであった、
<自称最高指揮官>が国家百年の計と提唱する、
<TPP 環太平洋戦略的経済連携協定>の施行は、その<新自由主義>の極みにあったことは、
アメリカ合衆国次期大統領が<TPP>からの撤退を確言している事態があるにもかかわらず、
<自称最高指揮官>の<緊縛美の夫人>へ寄せる思慕は、激しいまでの硬直となっていたことは、
マカンバの円卓の上に晒されている、優美な日本列島の悩ましげな姿態へ、
みずからを絡ませるということで見事にあらわされていることにあった、
<自称最高指揮官>の振る舞いに倣っては、数人の担当する男性閣僚も追従するのであった、
≪夫人は左右からからみついてくる男と頬ずりしたり、軽く口吻をしてから、
「腰のものを脱がして下さいまし」
と、催促するように形のいい腰部をゆるやかに動かせ、鼻を鳴らすような甘い声音を出した。
よしきた、とばかり、男達の手は一斉に夫人の腰につけたバタフライの紐にかかった。
「そら、御開張だ」
夫人の腰からむしり取るようにそれを剥がしたやくざ連中は一斉に歓声を上げた。
「さ、よく御覧になって」
股間をわずかに覆うそれまで男達の手で剥ぎ取られた夫人は
大胆にも官能味のある両腿を左右に割り、
腰部を前に押し出すようにして女陰を男達の眼に誇張的に晒して見せるのだ。
「バナナを切らせる前によく御覧になって。ね、静子は上つき、それとも下つき、ねえ、よく見て」
夫人が生暖かい漆黒の繊毛を浮き立たせるばかりに腰部を突き出すと、
やくざ達はむしろ、圧倒された気分になり、一斉に生唾を呑みこんだ。
数人の男達にぎっしり取り巻かれながらそんな演技をして見せる静子夫人を
千代と鬼源は少し離れた所から愉快そうに見つめている。
「客をずいぶんと喜ばしているじゃないの。なかなか奥様もやるわね」
と、千代がいうと、
「我ながらあの令夫人をよくここまで仕込み上げたものだと感心しますよ」
と、鬼源は黄色い歯をむき出していった。
男達は夫人の前や横に腰をかがませ、
夫人の開き加減にした太腿のミルク色の表皮に口吻したり、
指先でその股間の悩ましい漆黒の茂みをつまみ上げたり、
もう押さえがきかず、淫靡ないたぶりを開始するのだ。
静子夫人は綺麗に揃った長い睫をそっと閉じ合わせていきながら
白い歯を強く噛みしめてそんな男達のいたぶりを甘受している。
そして、むしろ、そんな淫靡な男達に挑戦するかのように
無理に冷やかな微笑を口元に浮かべようとさえしているのだ。
「どうなさったの。うんと悪戯なさっていいのよ。
割れ目の奥まで御覧になってもかまいませんわ」
といった夫人は更に挑発するかのように腰部を押し出し、
くなくなと乳色の滑らかな両腿をじれったそうによじらせるのだった。
一人の男が夫人の生暖かい繊毛の膨らみを上辺へさすり上げるようにしながら
生々しい女の秘裂を露にさせ、それを指先で押し拡げた。
幾重にも畳みこまれた、ねっとりとした肉襞が男達の手で剥がされるように開かされ、
遂に陰核までがはっきりと露出する。
「へえ、見事なおマメじゃないか」
一人が襞の上壁部より突き出したような愛くるしい陰核をそっと指先でつまむと
夫人の端正な頬は苦しげに歪んだ。
開き加減にした夫人の両腿の筋肉がブルブルと痙攣する。
「ねえっ、お尻の穴も見てっ」
夫人は背後に迫って豊満な双臀に口吻したり、
撫でさすっている男達に向かい、捨鉢になったように叫んだ。
男達の手が双臀にかかり、割り裂くように押し拡げていく。
「そら、ケツの穴もはっきり見えたぜ」
ぐっと尻の肉が引き裂かれていくと、夫人は全身を朱色に染めながら、
「おわかりになって、ねえっ」
と、娼婦めいた媚態を振りまくのだった。
「そんな所まで見られて、ああ、静子、死ぬほど、恥ずかしいわ」
夫人は男達の魂を揺さぶるような、ひきつった啼泣を口から洩らし、
「じゃ、始めて頂きますわ。バナナの皮をむいて下さいまし」≫
一糸もまとわない、生まれたままの全裸とされた、優美な日本列島の姿態は、羞恥の源泉である、
陰部をさらけ出されて、隠しようのない<GDP 国内総生産>を露わとさせられていた、
1980年代の中頃から<産業空洞化>と言われて、長い時間が経過していたが、
改善の兆候が見られないどころか、1990年代に入っては、バブル経済が崩壊し、
安定成長期の終焉をもって、<失われた20年>とされる低迷期をひたすら進むことへ向かっていた、
そろそろ、<失われた30年>と名称を変える時期に至っている現状にあって、
<三本の矢>と称する政策も、二本までの矢に依って、改革の幻想が行われることは可能であったが、
<民間投資を喚起する成長戦略>である第三の矢は、実質という現実を問われる産業の振興であり、
全国へ跨る地方創生でもあったことは、容易には成果の出せないことにあった、更には、
国家百年の計とぶち上げた、<TPP>施行の将来性にも、暗雲がたなびき始めた昨今からは、
生産性の発揮できる産業が緊急に必要とされる事態へ置かれるという状況にあった、
<田代屋敷>において、それまで生業とされていた、秘密ショーや秘密写真の生産だけでは、
社会保障費の増大をまかなうことはできなかった、高齢者の費用負担を増やしても知れていた、
やむにやまれず、古くからの世の常である、稼ぎに逼迫した者が一攫千金に収入を得る方法、
<ばくち>を合法化するという手段を得策としたのである、御禁制であった法律の改正である、
しかし、<国家が賭場を開いて、ばくちを奨励する>というのでは、あからさまで聞こえが悪い、
<カジノ合法化>と横文字にして品を持たせた言い換えでも、ギャンブル臭さは隠せない、
<IR推進法>というのであれば、<IT><AI>の語感に似ていて、先端産業のような雰囲気がある、
こうして、国家指導の下に、大規模賭博場を各県に建設して、国内外から多大の集客をして、
ギャンブル依存症の生産に依る収益の拡大を求めるという政策が実行されることになるのであった、
静子夫人も、あからさまに陰部をさらけ出して、貝が獲物に喰らいついたとされる、
花襞も妖美な膣の吸引・収縮力で、皮の剥かれたバナナを切って見せたばかりではない、
陰茎の大きさは人並み以上であるが、中等度の知的障害にある、捨太郎という青年と夫婦にされて、
全裸緊縛姿のまま、初夜の契りを結ばせられる被虐に晒されるという困難を果たすのである、
屈辱・恥辱・汚辱に苛まれながらも、耐えて実行する、静子夫人こそは、逆境に咲く美しい花である、
優美な日本列島の全裸の姿態を何でもありの<新自由主義>という縄で緊縛された、
<緊縛美の夫人>も、同様な逆境に晒されてこそ、美しい花となることができるという政策であった、
≪ふと眼を醒した静子夫人は、空虚な瞳で、ぼんやり四囲を見まわした。
元いた薄暗い牢舎の中である。
何時あの恐ろしい実演が終わり、何時この牢舎へ連れ戻されて来たのか夫人ははっきり覚えていない。
鉛を塗り込められたように身体中がだるく、冷たい床から上体を起こすのがやっとであった。
牢舎の鉄格子を通して、裸電球の鈍い光が眼に入る。
今が夜なのか朝なのか、地下の牢舎にある静子夫人は、それすら、わからなかった。
ただ、わかっているのは、何時聞か前までは、野卑な男女の取り囲む中で、
知能の低い醜悪な捨太郎とからみ合い、肉の実演を行ったという事。
毛穴から血でも噴き出しそうな屈辱にのたうちながら
卑劣な見物人達を楽しませるうち気を失ったという事だけである。
これで、とうとう私は畜生道に落ちたのだわ、
という悲しい諦めのようなものが夫人の胸に充満し、両手で乳房を抱きながら、
夫人は冷たい石の床を照らしている裸電球を放心した表情で見つめるのだった。
よくもこれまで生きてこられたものだと夫人は不思議な思いになる。
生きつづけることは、凌辱以外の何ものでもない。
しかし、動物的な本能が生命を持続させて来たのかも知れない。
肉体にも心にも、今まで気づかなかった悪魔的な斜面が現われて、
鬼源や川田達が明日は自分をどのような方法で凌辱し、
肉と心を責めさいなむつもりなのかと、ふと期待するような、それでいて、
そうした凌辱の前に完全に降伏することの出来ないわずかな反撥心を肉と心に持っている、
そうした複雑な女に夫人はなっていたのである。
夫人はおずおずとした気分で、そっと自分の下半身の方へ眼を移行させた。
白い脂肪を透かしたような太腿や下腹部あたりが、
気づかぬうちにねっとりと丸みを持ち、艶やかさを増している。その微妙な個所も、
鬼源達の嵩にかかったような連日の調教を受けながらも、ぴっちりと固く緊まっていて、
天鷲絨のような繊毛に柔らかく包まれていた。
静子夫人は、直角に囲われている狭い牢舎の隅で、
乳房を押さえ、立膝したまま、そっと無表情にそれを見つめていたが、
地下の階段を誰かが降りて来る気配にはっとして、身を小さくした。≫
敗戦後70年を経過して、よくもこれまで生きてこられたものだと不思議な思いになる、
<敗戦国>として生き続けることは、凌辱以外の何ものでもない、
動物的な本能が生命を持続させて来たのかも知れない、という感慨の生まれることは、
置かれた状況へ隷属するばかりにある、主体性からすれば、必然的な自意識にあると言える、
<自主・独立・固有の知覚>にある主体性という問題と真摯に向き合うことなく、
<戦勝国>の外圧に依って背中を押されるままにあるだけの成り行きでは、国家の存立は、
何を行っていることにあるのかというみずからの判断さえ覚束ない状態をもたらすことにある、
アメリカ合衆国に依って教導されるままに与えられた事案を翻案した政策を自前のものだと考える、
<日米同盟>は、過去も現在も未来も不滅にある、と公言できる隷属意識にあっては、
被虐に晒される状況が日常としてあることも、ただ受容して、その日暮らしをするしかないことにある、
次に強要される事案がどのような屈辱・恥辱・汚辱にまみれることであっても、
絶対に逃れられない<田代屋敷>にあっては、過去・現在・未来における、不滅のありようにある、
ロシアの大統領との交渉においても、<戦勝国>の外圧という意義では変わるところはない、
国益の保持からは、一度領土として奪取したものを簡単に手放すということはあり得ない、
<返還>は、経済・安全保障・対外主権を満たすに<必要な代価>を求められて当然のことにある、
それができない交渉であれば、武力を行使して奪い返す以外にないことを人類史は示している、
<返還>の餌を垂らされながら、相手の経済事項の要求を受容することを、
交渉の将来への持続と翻案するよりほかない事態となることにある、
<田代屋敷>として存在することは、夢・希望・願望の一切を剥奪された、過酷な現実である、
夢・希望・願望の翻案は、その現実を直視することを日々の<娯楽>として紛らわすことでしかない、
折々の喜怒哀楽の感動さえあれば、人間の生誕から死滅へ至る道程は長いものではない、
人生において、見い出すべき<人間の真のありよう>という異常な希求は、
文字通り、そのような異常な事柄を考える、異常な人間が追い求めるというありようでしかない、
<性奴となる家畜>としてあることは、難しいありようではない、
牢舎から再び連れ出されることは、過酷な性的調教へ晒される事態が待っているだけのことにある、
≪「それじゃ、こっちも仕上げにかかるわよ」
と、春太郎達は二本の責具の操作を強め始めた。
川田は息をはずませながら
自分を懸命に咥えこんでしゃぶり抜く夫人の上気した頬面をはっきりと上から見つめた。
気品のある端正な顔面に乱れた黒髪をもつれさせ、
紅潮した柔媚な頬を収縮させて自分のそれを必死に吸い上げている夫人を見下していると、
かって自分はこの令夫人のお抱え運転手であったという事が信じられない思いがする。
「射精してほしいかい、奥様」
川田は懸命に唇と舌先を使って吸い上げる夫人の美しい顔面に見惚れながら声をかけた。
夫人は咥えこんだまま長い睫を閉ざしつつ、うなずいて見せている。
「早く出して下さらないと静子の方が先にいっちゃうわよ、と、奥様はいいたいのよ」
と、夫人の下腹部をいたぶる春太郎は頓狂な声を出して笑った。
「それじゃ、奥様のその気品のある美しい顔を見ながらこってりと気をやらせてもらうぜ」
川田は発射させるために腰部の動きを早め出した。
「いいな。発射しても口を離すんじゃないぞ。最後の一滴まで絞り尽すように飲みこむんだ」
咥えたまま夫人はうなずいたが、固く閉じ合わせた切長の眼尻から糸を引くような涙が一筋、
流れ落ちるのを川田は見て嗜虐の悦びに全身を酔い痺れさせていく。
夫人は川田が自失する寸前にまで到達しているのを知覚すると
粘っこい唾液を注ぎながら舌先をからませ、
唇で雁首の根を強く緊め、狂気めいて顔面を上下に動かした。
「ううっ」と、川田は夫人の顔面を挟むようにしていた両膝の筋肉を痙攣させた。
川田が自失した瞬間、
夫人もまた二人のシスターボーイの追い上げによって白熱化した肉体を崩壊させたのだ。
その瞬間、深々と突き立てられた筒具を上層の花襞は軟体動物のような粘っこさでギューと緊め上げ、
奥深い吸引力を発揮し、同時に下層の菊座の蕾も異様な収縮力を示して
深々と突き止てられたアナル棒を強く緊めつけるのだ。
夫人は川田の肉塊を深く口中に唾えこんだままで絶頂を極め、むせ返るようなうめきを洩らしたが、
同時にその口中へ崩壊した男のおびただしい体液が流れこんで来る。
一瞬、夫人はううっと窒息の苦しさに耐えながら美しい眉根をしかめ、
狼狽気味に口中一杯に拡がる粘っこい男の体液を吸い上げるように喉へ流し入れた。
こうした要領もすべて鬼源達のお仕込みによるもので、
夫人は男の生血を吸い上げる魔女に化身して固く眼を閉ざしながらゴクリ、ゴクリと喉を鳴らせている。
絶頂を極めた肉体、その瞬間、男の体液を口中に受けた戦慄を伴う妖しい被虐性の快感、
夫人は極彩色の雲の上に乗っかったような倒錯感と
性の極限を味わわされたような気分を同時に味わっている。
川田は自分を吸いこむ夫人の妖艶さを増した顔面を息を切らせながら見下している。
ねっとり汗ばんだ夫人の美麗な容貌には
法悦境をさ迷うような恍惚とした一種の悲壮感が滲み出ている感じで、
口の端から白濁の粘っこい涎を噴きこぼしながら喉を鳴らしつづける夫人を
川田は痺れ切った気分で見惚れているのだ。≫
<自称最高指揮官>の<緊縛美の夫人>へ寄せる恋慕は、
マカンバの円卓の上に、一糸も着けない全裸を縄で縛り上げられ、吸茎させられながら、
膣と肛門へ突き立てられた責め具を操作されて、
快感の絶頂を極めさせられるという夫人の媚態を食い入るように見つめさせて、
法悦境をさ迷うような恍惚とした思いにまで高ぶらされることにあった、
屈辱・恥辱・汚辱の被虐に晒される、優美な日本列島の全裸の姿態をあらわす、
<緊縛美の夫人>とみずからは、一心同体にあるのだと共感できる思いにあった、
<田代屋敷>に暮らす以上、<自主・独立・固有の知覚>にある人間存在とは、
<隷属・受容・翻案体質>において、<隷属することは、悦びである>を体現できる存在である、
それ以上のありようなどあり得ないことを思い知るのだった、
それが<万世一系>とされる、日本民族として生まれたことの宿命なのである、
静子夫人に依って教え導かれる境地こそは、夢・希望・願望の一切を剥奪された状況において、
過去・現在・未来を貫く、不滅のありようを法悦境をさ迷う恍惚として感受できることだった、
<自称最高指揮官>は、みずからが静子夫人として存在することの認識に置かれたことだった、
≪春太郎は、しっとりと翳を沈ませた夫人の柔媚な頬に軽く接吻して、
「いいわね、ここにいるご婦人方の御機嫌をしっかりとって頂戴。皆んな大事なお客なのよ」
つまり、ここにつめかけている女達は客、自分は、客を楽しませる実演スターだ、
と、春太郎に改めて念を押されるまでもなく、
夫人は自分の心にはっきりふんぎりをつけたのだろう。
夫人は、軽く瞑目しながら、小さくうなずいて見せたのである。
自分が、みじめな実演スターとして成長することが千代や川田の狙いであるなら、
彼等が望むように振る舞い、心身ともに自分を作りかえ、彼等を満足させる、
それが彼等に対する一種の復讐行為かも知れない。
あれ程にまで哀願し、哀訴し、その代償として自分を汚辱の底に投げこんだのに、
彼等は遂に千原美沙江を罠にかけたのだ。
裏切られた憤り、絶望と屈辱、
そうした苦しさを一切忘れる方法は彼等の手に我が身を日夜委ね、
狂気した被虐の調教を受けること、
そして、それを快感として感じる肉体に自分を変貌させていくことよりない。
静子夫人は、次第に自分をもっともっと傷つけたいという血走った気分に駆られてきていたが、
千原美沙江と折原珠江がすでに彼等の手に落ちたことを知って、
それで、はっきり自分のとるべき方針が決まったような気分になったのだ。
自分の肉体にあって、
自分の今まで気づかなかった能力を調教師達のリードで巧みに引き出されていくうち、
ふと夫人は、さらにその能力を引き出されてみたいという願望が、
嫌悪の戦慄、自尊心の痛みと並行しながら、
マゾヒスチックな感触となってこみ上って来たのかも知れなかった。≫
<田代屋敷>においては、裏切られた憤り、絶望と屈辱、
そうした苦しさを一切忘れる方法は、<戦勝国>の外圧に我が身を日夜委ね、
狂気した被虐の調教を受けること、
そして、それを快感として感じる肉体に自分を変貌させていくことよりない、
それが快感であれば、屈辱・恥辱・汚辱にまみれることは、
失われた希望にあっては、絶望だけがある状態には違いないが、
それだけ、快感の増すことは、更なる悦びとなることであった、
今や、みずからは静子夫人であるという自意識にあった、<自称最高指揮官>は、
静子夫人から教導されたありようを国民に対して教導することで、
被虐に晒される国民が<一心同体>の共感にあることこそが執政であると確信していた、
≪「文夫さん、静子は淫婦になってあなたのお姉様を奪ったわ。
今度は弟のあなたまで奪うのよ。覚悟してっ」
静子夫人は恨みとも呪いともつかぬ、せっぱつまった声を出すと、
頬にまで伝わる乱れ髪をさっと払いのけ、悲壮味を帯びた顔面を上げた。
「さ、静子を犯すのよ」
と、それを強制するかのように夫人は文夫の股間の肉棒を求めて双臀をモソモソ揺れ動かせた。
文夫も悲痛な決心をしたように顔を起こすと緊縛された裸身をよじらせて
夫人の深い翳りを含んだ双臀の割れ目へ怒張した肉棒を突き立てていく。
「駄目っ、違うわ、もう少し、下を狙って」
静子夫人がむずかるように美しい眉根を歪めて腰部をよじらせ、
双臀をうねらせて文夫のそれを引きこもうとしているのを眼にすると
室内に笑声と嬌声が渦巻き昇った。
「文夫さん、しっかりっ」
「奥様もがんばってっ」
千代や順子達は、変な押しくらマンジュウね、などといって笑いこけている。
何とか一つにつながろうとして背面と胸をこすり合わせ、
腰部を共にねじり合わせている令夫人と美少年の狂態、
それを取り囲んで弥次り、哄笑する悪女達、室内には異様な昂奮の熱気が充満した。
もうじっとはしていられなくなったのか、春太郎と夏次郎はモソモソ動き出して、
あせり気味に腰部の表裏をすり合わせている二人に身を寄せつけていった。
「まだ、的に入らないの、文夫さん」
「そりゃ、そうね。こうしてお互いに後手に縛られているんだもの。
お尻と腰だけ使ってつながそうというのが無理よ」
などといいながら、春太郎は夫人の汗ばんできた双丘に両手をかけて割り、
夏次郎は文夫の硬く吃立した肉棒を手につかんで菊座の陰口を狙わせようとした。
すると夫人は乱れ髪をはね上げるようにして、
手を出さないでっ、と二人の変質男に向かって叱咤するようにいった。
「あ、あなた達の助けはいらないわ。私達だけにしておいて下さい」
激しく息をはずませながら、ふと、怒りを含んだ夫人の妖しい潤みを帯びた瞳に射すくめられて
春太郎と夏次郎は思わず手を離した。
「ああ、そう。人の恋路の邪魔をしないで、というわけね」
二人は夫人の昂った神経を感じて苦笑しながら手を引いたが、
同時に夫人は、さ、文夫さん、と、励ますように文夫に声をかけ、
固く硬直した文夫の肉棒へ挑みかかるように汗ばんだ双臀をすりつけていく。
文夫は夫人の乳色の柔軟な肩に額や鼻先を荒々しくこすりつけながら
激しく腰部を使って肉の矛先を夫人の双臀の割れ目へ突き立てたが、
ふと、それを菊座の陰口で受けとめた夫人は、
「待って、文夫さん、そのまま、動かないでっ」
と、昂った声をはり上げた。
夫人はそれがはっきり的に触れたのを知覚すると
文夫の動きを封じさせて熟っぼく喘ぎながら双臀を上下に揺らして
菊座の微妙な筋肉を収縮させながらそれを吸いこもうとしている。
文夫は自分を粘っこく吸いこもうとする夫人の肛門の軟化した筋肉の収縮をはっきりと感じとった。
その微妙な軟体動物のような収縮と緊縮感に文夫は驚き、
同時に息づまるような異様で妖しい快美感を知覚した。
ゆるやかに双臀を動かしてわずかずつ吸い上げた夫人は急に昂った声をはり上げた。
「さ、文夫さん。突いてっ、思い切り突くのよっ」
夫人にけしかけられたように文夫は狼狽気味になって一気に挑みかかった。
「もっと、もっと、強く」
文夫は歯を喰いしばり、必死になって突いて出る。
「ああっ、文夫さんっ」
文夫のそれを深々と受け入れた夫人は
上体をのけぞらせるようにして苦痛とも悦びともつかぬ悲鳴に似た声で叫んだ。
それは夫人にも信じられない事で、文夫の火のように熱く、
鉄のように硬い肉棒がその微妙な粘膜を突き破って直腸にとどくばかりに侵入してくるとは。
激烈な痛みと被虐性の妖しい快感とが同時に炸製し、
腰骨まで破け散るかに思われて夫人は一瞬、眼が眩んだ。
「入ったの、ね、奥様、入ったの」
と、春太郎は緊縛された上体を大きくのけぞらせて喘ぐ
夫人の汗ばんだ美しい横顔をのぞきこむように見ていった。
静子夫人はさも切なげに眉根を寄せ、キリキリ奥歯を噛み鳴らしながらうなずいて見せた。
…………
「そうよ。奥様。悩ましくお尻を使ってあげて文夫さんにこってり射精させてあげなきゃ」
立位で直結したまま熱い息を吐き合い、
汗ばんだ肩先を波打たせて静止している夫人と文夫に向かって女達は一斉にはやし立てた。
夫人は菊座の微妙な蕾を女の性器にかえて
文夫の熱くて硬い矛先で突き破らせたという恐怖の故か、
時々、戦慄を伝えるるように文夫のそれを深々と咥えた双臀をブルッと痙攣させていたが、
やがて、鬼源や女達の要求に応じるかのよう喘ぐような息使いと一緒に
文夫を咥えた双臀をゆるやかにうねらせた。
文夫がそれにつられて腹部を強くよじらせると夫人は
火でその部分をえぐられるような痛みを感じるのか
喰いしばった歯の中で絶息するようなうめきを洩らした。
「静子さま、大丈夫ですか」
文夫は苦しげに喘ぐ夫人が気になって押して出ながら
夫人の耳元に口を寄せておろおろしてたずねたりする。
「大丈夫ですわ。静子、これで充分、感じていますわ。それより、ねえ、文夫さん」
こんな方法でも文夫さん、感じて下さる? と夫人が熱い喘ぎと一緒にいうと、
文夫はええ、何だか、僕、身体が痺れる位に気持がよくて……と、声を慄わせていった。
「静子が汚らわしい事、させているとは思わない?」
「そ、そんな事、思わない」
「嬉しいわ。じゃ、お互いにうんと楽しみ合いましょう。ね、いいでしょう、文夫さん」
夫人はこの異常な悦楽の陶酔の中に文夫を溶けこませ、
自意識を喪失させる事が文夫にとってはせめてもの救いになると悟ったのだろう。
それには自分が淫婦になって
文夫をキリキリ舞いにさせるより方法はないと夫人は半ば捨鉢の度胸をつけて、
もっと、もっと、強く突いて、と、文夫にせがむように口走り、
深々と咥えこむとそれを微妙な陰口と筋肉を収縮させて緊め上げながら
官能味のある双臀を弧を描くように悩ましくうねり舞わせるのだった。
そして、夫人は何時しか文夫を煽情させるつもりが、
逆にこれまで知った悦楽とは違う異質の悦楽を文夫に教えられた気分となる。
「ああ、文夫さん。ど、どうすればいいの、静子、こんなに燃えちゃったじゃない」
夫人は意味にならないうめきを洩らしつつ、
双臀を大きくうねらせて文夫の押して出る矛先と呼応した。
生まれて初めて味わった陰密で、奥深い被虐性の快感が荒波のように押し寄せてきたのだ。
静子夫人の振り乱す黒髪は背後から責め立てる文夫の顔面にも降りそそぎ、
文夫は夫人の甘い黒髪の香料に更に酔い痴れて、
ああ、静子さま、と、喘ぎながら遮二無二、責め立てていく。
文夫から思い知らされるこの陰密で妖しい快美感に夫人はのたうち、
若い文夫の腰の力で菊座の快楽源にくさびを打ちこまれる毎に
夫人は血のような喘ぎと啼泣を洩らした。
腰骨は痺れ切って最初に感じたその部分の痛さはなくなり、
代って名状の出来ぬ妖しい陰密な快美感だけが腰から背骨にまで突き上げてくるのだ。≫
<自称最高指揮官>は、一糸もまとわない、
生まれたままの優美な日本列島の姿態を露わとさせていた、
直径五・二メートルのマカンバの円卓の上に、後ろ手に縛られ、
ふたつの豊満な乳房を上下から挟むようにされた胸縄を掛けられ、仰臥させられていた、
そのような全裸の緊縛姿にあることを<自称最高指揮官>は、
1960年、五歳の幼少のとき、邸宅の二階から日本庭園を眺めやった光景と重ね合わせていた、
池のほとりには、瘤をごつごつとさせている、黒々とした桜の大樹があった、
その大樹を背にさせられて、雪白の全裸にある女性が直立した姿勢で繋がれていた、
後ろ手に縛られ、胸縄を施された緊縛姿は、
愛らしい乳首を付けた、ふっくらと美しい隆起をあらわす、ふたつの乳房を強調されていたが、
腰付きのくびれからしなやかに伸ばさせた両脚へかけての優美な曲線にあって、
下腹部の箇所が隠されるべき漆黒の陰毛をすっかり奪われていたことで、
柔らかな女の小丘は、白いふっくらとした盛り上がりをあからさまとさせていた、
更には、腰付きのくびれへ巻き付けられた縄が臍の辺りで結ばれ、縦へ下ろされて、
白無垢の箇所へもぐり込まされていたことは、深々とした亀裂の存在が如実となっていることにあった、
素っ裸にされた女性が縄で縛り上げられて、晒しものとされている、
それは、異様そのものの姿には違いなかったが、
夢見るような美麗の心地良さを感じさせるものとしてあったことは確かだった、
全裸にある女性が漂わせる艶麗は、縄で緊縛された姿にあるからこそ、
妖美をかもし出させることにある、日本列島の優美な全裸の姿態は、
縄による緊縛の被虐の姿にあるからこそ、<美しい国 日本>の凄艶と言えることにある、
被虐に晒され続けなければ、その認識へ到達することはできない、
国家は、対外戦争に負けたからこそ、その陵辱されるありようにおいて、
<美しい国 日本>を見い出すことができたということにある、
静子夫人の<教導>は、深い感動をもたらすという衝撃を与えたことであった、
我に返った、<自称最高指揮官>は、仰臥させられたみずからの下腹部へまなざしを投げていた、
下腹部の箇所を隠すべき漆黒の陰毛はすっかり奪われていた、剃毛されたのである、
柔らかな女の小丘は、白いふっくらとした盛り上がりを露わとさせて、
深々とした亀裂の存在が神秘的な甘美を匂い立たせるくらいに如実とされていた、
艶やかな双方の太腿はぴたりと閉じ合わされていたが、
列席している二十人の男女に依って絡みつかれ、性的調教の生贄として要望されることにあれば、
屈辱・恥辱・汚辱の被虐に晒される状況は、みずからの性欲と性的官能を燃え上がらせて、
しなやかな両脚をあらん限りに割り開かせることをさせる、
ぱっくりと覗かせた陰部には、強張った女芽という司法、暗い奥を垣間見させる膣口という立法、
窮屈なすぼまりにある肛門という行政がさらけ出されることになり、
好き勝手におもちゃにされる、性的調教の乱痴気騒ぎは、疲労困憊となるまで執行されるのである、
ようやく解放されたとしても、<緊縛美の夫人>は、縄で縛り上げられた全裸の姿態のまま、
縄尻を取られ、背中を小突かれながら、地下牢へ引き立てられていく身上にあるだけである、
短い休息を与えられた後は、再び、奴隷として調教される時間が待っていることでしかなかった、
≪地下牢に続く石の階段を、
その優美な肉体を後手に縛られた静子夫人は春太郎と夏次郎に縄尻を取られて歩まされている。
惨澹たる思いに身も心も微塵に打ち砕かれた静子夫人は、
未だ悪夢の中をさ迷っているような半ばうつろの表情で、
冷たい石段を跣足で踏みしめていくのだ。
幾度、この冷たい石段を登り降りしたことだろう。
自分の人生は、この地下牢と満座の中へ引き出されて生恥をかく、
それ以外にはないのだ、と思うと、夫人は泣くまいとこらえるものの、
ふと美しい切長の眼尻より涙が流れ出て、白蝋のような頬をぬらすのだ。
…………
「正に女として非の打ち所なしね。第一、鬼源さんのいう通り、稀に見る名器だわ」
春太郎は、悪戯っぼい笑いを見せて、いうのだが、夫人は、薄く眼を閉ざし、口をつぐんでいる。
つい先程までは、あられもないうめきと涕泣をくり返し、甘い柔らかな唇で、
魂もしびれるような吸引力を発揮した静子夫人であるのに、
まるで、そんな事は嘘のように、端然とした美しい横顔を見せ、
優美な太腿をぴったり密着させて、そこに立つ夫人であった。
破壊しようとしても、破壊出来ぬ、この優雅な匂いに包まれた美しさ……
千代が反撥し魔神に魅入られたような残虐な責めを夫人に加えようとするのは、
これが原因かと、春太郎はわかったような気になった。
…………
夫人は、再び、軽く背を押されて歩き始める。
裸電球に、ぼんやりうつし出された石畳の上を歩み、
一番奥にある四坪ぐらいの広さの牢舎が、夫人の休息室であり、宿舎なのであった。
「ハイ、着きましたわよ、奥様」
春太郎は、鉄格子にかかった南京錠を外し鉄の扉を引っ張った。
夏次郎に縄尻をとられて、その場へ立っている夫人の物哀しげな眼は、
じっと鉄の扉を開く春太郎の動作に注がれている。
一体、何時まで、この黴くさい、孤独と暗黒の牢屋暮しをしなければならないのか……。
夫人は、急に自分があまりにも、みじめに思えて来て、胸がつまり、涙が出そうになった。
この牢舎から出て、実演ショーを演じ、また骨や肉までがバラバラにくずれるような調教を受け、
そして、また、この淋しい冷たい牢舎へ連へ戻される……
奴隷とはいえ、あまりにも悲惨な毎日のくり返しに静子夫人は、
それでもなお生きつづけている自分が、ふと恨めしくもなるのだ。≫


*上記の≪ ≫内は、団鬼六著『花と蛇』より引用


(2016年12月19日 脱稿)




☆13.縄による緊縛という結びの思想・四十八手 (28)

☆13.縄による緊縛という結びの思想・四十八手 (26)

☆縄による日本の緊縛