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左に示されているのが、『とらわれのアクション』という作品の全体像です。 社会主義者ルイ・オーギュスト・ ブランキの記念像として造られたもので、 長い獄中生活を送ったブランキの意志と忍耐をあらわしているものです。 しかし、描かれている対象や背景を知らなくても、 この作品は、われわれに尋常でない状況における反抗を見事に伝えてきます。 それは、後ろ手に縛られ身をよじった姿であらわされた女性の肉体が、 抑圧や拘束や被虐を感じさせずにはおかず、 それに対して、男性の頭部は耐え抜く凛々しい意志を示しているからです。 男性の顔立ちに女性の肉体などとは、実際にはあり得ないことです。 実は、この相反矛盾したありようがあるからこそ、 この作品の生々しさが伝わってくると言えることなのです。 作品の対象や背景を知っている者ならば、 この相反矛盾は、ブランキが闘った社会革命として読み取ることもできるでしょう。 しかし、相反矛盾していることがあらわす全体性というものは、 それ以上の事柄を現出させることもするのです。 芸術表現は、作者に内在する或るものを意思伝達するために行われます。 内在する或るものは、どのような表現力をもってしても、天才でさえも、 100パーセント表出できるものではありません。 そこには、必ず残るものがあります、その残余は謎というかたちのものになります。 その謎を解き明かそうとするために、繰り返し表現が行われていくわけですが、 謎に対する取り組み方が強ければ強いほど、表現は拡大深化したものとなります。 謎は、哲学の言葉で言えば、自分はどうして存在するのか、といったことですが、 それは、当然、表現されたものにも含まれるものです。 取り組み方の強い作者であれば、意識して謎を表現することを行います。 相反矛盾をあらわして表現されたものは、 この謎が強烈になったものとしてあることだと言えるのです。 男性女性をひとつにした彫像の全体性が現出させていることは、 われわれが人間としてどのようにあるかという謎を示すと同時に、 それが性差を超えたありようにおいて答えがあること示しているということです。 それをわれわれに気づかせる起動力となっているのは、性的官能です。 ひとつの試みをさらに続けてみましょう。 画像をクリックしてみてください。 |
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