「お嬢さん、みなの前へ」 だれかが叫んだ。 「お嬢さん、みなの前へ」 残りの者全員が唱和してそう叫んだ。 Yはおずおずとその伸びやかな姿態をおしげもなくさらして、 みなの前へ立った。 |
「晴れやかな美神の誕生だ」 だれかが叫んだ。 「晴れやかな美神の誕生だ」 残りの者全員が唱和してそう叫んだ。 Yは誇らしげにみずからのありようを際立たせて見せた。 さらなる高みへ向かおうとする思いがこみ上げてきたのは、 そのときだった。 だが、同時に、彼女は気づいた。 恋人の姿はもうそこにはなかった。 彼の姿はそこに集う人形たちのいずれかにまぎれてあるのだろうが、 少なくとも、Yには多くの人形のひとりにしか見えなかったのだ。 彼女は、さらなる高みへ昇り、 美の戴冠を求めたのだった。 そう、彼女が求めていたものとは、それだった。 恍惚とした思いにありながら、Yはそう確信できるのだった。 彼女は祝宴の場を離れて、 さらに奥へと向かうのであった。 |
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