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舞台への入り口を閉ざすと控え室へ戻ることができた。 控え室の中央に置かれている四脚の椅子のひとつに女性の姿があった。 近づいていったら、相手の方もこちらの存在に気がついた。 その顔を見たとき、めまいのようなものを感じさせられた。 例の案内の女性だったが、 彼女の顔はあばら家の惨劇の舞台に立った女性と瓜二つだったのである。 「戻っていらっしゃるのをお待ちしておりました」 はにかんだような微笑を浮かべながら、何ごともなかったように語りかけてくるのだった。 立ち上がってこちらへ向けた全身像は相変わらず生まれたままの全裸姿をさらしていたが、 優美な曲線に縁取られた、傷ひとつない、はつらつと輝く白いきれいな肉体だった。 「麻生絵美子氏の講義がまもなく始まります。 舞台へご案内いたしますので、ついていらしてくださいませ」 先を歩く彼女のヒップが可愛らしくゆれていた。もちろん、鞭の傷跡などなかった。 彼女の手引きに従って控え室を出ることにした。 |
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